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第1165回 中国自動車業界の急速な発展―その2-

(2025年4月10日)

 2024年、中国の自動車輸出台数は279万台(前年比31%増)で、日本を78万台上回り、2年連続で世界一となりました。その主役となったのが欧米や東南アジアを中心とした国々への安価な新エネ車の輸出で、何よりも材料の供給ネットワークがしっかりとして、EV製造コストの3割以上を占める安い車載電池(欧米の価格の8割くらい)を手当てできるのが強みになっています。その結果、日本の東南アジア市場の牙城が崩れ、アメリカやEUは中国製EVに高額の関税を課す姿勢を示しました。


 中国製EVの台頭についてはとかくの批判があります。2015年に発表された<中国製造2025>以降、政府は自国の自動車メーカーに対しなりふり構わず莫大な資金援助を提供してきました。又、西側企業から様々な形で技術を吸収しましたが、その方法についてもとかくの批判がありました。とはいえ、インターネット接続に優れ、環境にも優しく、2023年末時点で、テスラの3万9000ドルを大きく下回る1万2000ドル(BYD)という価格優位性は排除しにくく、また、されるべきではありません。


 その一方で、これまでも多くの分野で行ってきた中国式産業発展方式(新しい産業分野では、補助金で多くのスタートアップを促し、玉石混淆の中から少数の優秀な企業を育てていくやり方による弊害(その過程で発生する、林立による過剰生産、低価格競争は先進国に追いつくための授業料として許容)が顕在化したのも、2023-24年の大きな特徴でした。2023年に中国国内で新エネ車を生産した企業は50社以上、それが優遇措置獲得を目指し、シェア拡大のために生産能力の増強に血眼になったのですから供給過剰は必至。本来、8割稼働しなければ損益分岐点を下回るのに、2023年は5割程度、2024年には10社余りが経営破綻した状況では、輸出拡大でしのごうと躍起になったのも当然と言えましょう。こうした状況を受け、2024年以降、低価格化の主導権はテスラからBYDへと移り、内外他社も雪崩を打ってそれに続きました。これによってテスラは年初から減益に転換し、日本のメーカーも苦境に立たされました。生産力の増大、低価格化競争、一方、消費は低迷、輸出拡大には逆風、同年7月、政府はこの消耗戦を抑制する方針を示す一方、買い替え政策の促進や、農村への新エネ車普及を進める方針を示しましたが、そんな中でも民営大手三社(BYD・吉利・長城)は好調、国有大手三社は減益と明暗を分けました。  

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