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第1167回 中国自動車業界の急速な発展―その4-

(2025年4月24日)

 中国EVのすさまじい海外進出は世界に大きな衝撃を与えています。EUでは既にメルセデスベンツの筆頭株主に北京汽車が、ボルボの親会社に吉利がなるなど、中国の影はじわじわと浸透していましたが、2023年にEU向けに輸出された中国製EVはなおまだ29万台(EU全体の販売台数の19.5%、中国製4割、欧米などのメーカー6割)に過ぎませんでした。しかし、欧州市場への輸送力の欠如をBYDなどが劇的に克服した結果、2024年2月初めには、安い中国製EVが流入し、警戒感が高まりました。中国政府もこれに対応し、EVメーカーを指導する各地方政府に対し、現地での研究開発拠点の設置や現地とタイアップした1サプライチェーンの整備など、8項目の通知を出しましたが、EU側は2024年7月、中国製EVに対し、これまでの10%に加え、最大37.6%の追加関税を課す暫定措置を発表、中国は猛反発し、WTOに提訴しました(10月末に、今後5年間、7.8~35.3%上乗せを決定)。この措置は、中国企業だけではなく、日米欧の中国製EVにも甚大な影響を及ぼすものであり、瞬く間に波紋が広がりました。一方でEUは、2025年から強化する環境規制(脱炭素化)目標を中国製EVを規制しても達成できるのか、という切実な問題に直面しました。


 中国企業とEU企業との合従連衡はめまぐるしく、小鵬汽車がフォルクスワーゲンと、奇瑞がジャガー・ランドローバーとEVの共同開発に取り組む一方で、提携戦略の見直しを迫られるEU企業も少なくありません。中国製EVに規制をかけても、中期的に見れば、中国ブランドの欧州での現地生産は加速度を強め、価格圧力の高まりは避けられない趨勢と言えましょう。こうした結果、中国製欧米車のシェアは着実に減少し、その分、中国製中国車は着実に増加するものと考えられます。他方、EU企業が価格面で抵抗するには安い中国製EV部品に頼らざるを得ないというジレンマもあり、中国側に対する逆風が強まったのは必然的結果と言えます。2024年11月、中国は自国の自動車大手企業に対し、追加関税を支持した欧州諸国への大型投資を一時停止し、不支持国への投資は積極的に投資するよう指示し、分断を図りました。欧州側も、フランス・イタリアなどが、アジアからの生産車輸送は環境負荷が大きいという名目で補助金対象から外すなど、保護主義色の濃い対策も打ち出し、対向しました。しかし、こういった対立の中で、今年になり、もう敵対はやめて積極的に中国企業と提携しよう、関税もなくしていこうという雰囲気も生まれ始めています。  

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