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第1176回 農村義務教育の動向-その1-

(2025年6月26日)

 2017年の十九全大会で、習近平第二期政権がスタートしました。2021年に小康社会実現を謳った習政権としては、都市と農村の格差是正が政権の最重要課題の一つに位置付けられていました。教育面では、90年代以降、義務教育の徹底が図られ、農村義務教育の拡充にも力が入れられましたが、2017年時点では、都市と農村の教育にはまだまだ大きな格差が存在しており、都市部で補習熱や先取り教育がヒートアップする一方、農村部では依然としてカリキュラムの不備や就学・通学困難といった問題が根強く残っていました。それは視点を変えれば、都会の児童はたくさんの宿題、消化しきれない補習クラスを抱え、農村の児童は、放課後は家事の手伝いに忙殺されたり、あるいは子供たちで集まって遊んでいるという違いでもあります。「都会では保護者も先生だが、農村では先生も保護者である」、言い換えれば、都会では保護者も先生になって子供の学習を補助するが、農村では、出稼ぎに行っている親も多く、先生が寄宿舎に泊まり込んで、親代わりに子供たちの生活の面倒を見ることもある、ということで、学習環境に違いがありすぎるのです。


 都会の学校には図書館があり、読みたい本がたくさん置かれています。僻地の小学校には整備された図書館もなく、若干の書籍はあっても内容が古く貧弱で、様々な図書に触れる機会が絶対的に不足しています。こうした状況を憂慮し、最近、農村小学校でも閲読を重視しようという機運が高まり、農村の小中学校図書館設置基準の制定と良書の選定、専門の図書職員の選任が叫ばれるようになりました。また、公益組織や民間団体による財政的支援を整備すべきだ、という声も上がっています。


 食事面の問題も以前から改善が叫ばれ続けていました。その意味で、2022年に<農村義務教育成都・児童栄養改善計画実施プラン>が出されたのは大きな成果と言えましょう。前年、2021年の統計では、それまで10年間に栄養改善が実施された地域の子供たちの平均身長は、男子4.2cm増、女子4.1cm増、体重は男子3.5㎏増、女子3.3㎏増で、いずれも全農村地域の平均を上回りました。新たなプランでは、学校給食を推進し、対外委託はせずに学校が自主的に運営、統一管理することにし、バランスの取れた昼食(“温かい”食事)を提供しつつ、食の安全に気を配り、学校の責任者が陪食することを盛り込みました。また、給食資金が流用されないよう、帳簿の整備を厳格に行うことも明記されています。  

 
 

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