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第1187回 中国のレアメタル政策-その3―

(2025年9月18日)

  追い込まれたアメリカは、5月12日に米中間で90日間の関税停止を伴う協定を成させ、米側は中国製品に30%の関税、中国は米製品に10%の関税とそれぞれ引き下げ、その後、6月のトランプ大統領と習近平主席との電話会談で、ようやく「レアアースの輸出を再開する」という合意を引き出しました。このことは、EV用の蓄電池、AI、太陽光パネル、風力発電機と、エネルギー転換を進めれば進めるほど、世界が中国の術中にはまり込んでいくことを如実に示しています。


 各国も対中交渉を継続する一方、この情勢を挽回しようと、新たな戦略の構築に取り組み始めています。その一つが中国以外での資源の確保ですが、実はここでも中国企業が圧倒的に先行しています。国内に大規模なレアアース加工企業を抱える中国は、国内資源を温存しつつ、世界各地で積極的に原料を確保し、自国の優れた加工技術で付加価値を高め、世界市場を取り込もうという戦略を推進しています。自国がいかに豊かな資源を持っていても、これを精製するのはほぼ中国頼みですから、中国による寡占は進む一方です。その先頭に立つ政府系大手企業の盛和資源は、レアアースの資源大国オーストラリアを始め、アフリカ諸国など世界各地の鉱山をその標的にしています。


 では、先進諸国はどのような対策を講じたらよいのでしょうか。アメリカは2024年の国家防衛戦略で、2027年までに中国に依存しない供給網をつくり、自国内での鉱山開発を進め、加工技術の向上を急速に整備するとし、10年前にゼロだった生産量が、現在、世界の12%を占めるようになりました。2025年6月のG7は、中国の「重要鉱物における非市場的な政策と実践」を批判、各国に協力を呼びかけました。中国への資源供給国だったオーストラリアも、同国企業が2025年5月、マレーシアでレアアースの分離に成功、アメリカでも精製を始める計画を立て、埋蔵量世界二位のブラジルも資源開発に本腰を入れ始めました。ブラジルの鉱山開発は2022年に日米欧が立ち上げた「鉱物安全保障パートナーシップ」のプロジェクトにも採用されています。さらにインドも自国資源の囲い込みに動いています。日本は、すでに2010年の尖閣諸島沖での事件による中国のレアアース禁輸ショック以降、政府備蓄を増やす一方、オーストラリアへ出資して資源の確保を進めてきましたが、最近では世界第三位の埋蔵量を有すると推定される南鳥島周辺海域のレアアース泥にも注目しています。  

 
 

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