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第1189回 中国経済振興政策あれこれ―その2-
(2025年10月2日)
京東・淘宝・天猫・拼多多など中国の大手ECサイトが毎年6月18日を中心とした期間に実施する「618」販売促進キャンペーン、今年は5月13日からプロモーションが始まり、5月31日に本格的なセール期間に突入、6月20日頃から終盤戦に入りました。今年は各社とも期間を延長したり、割引方式を簡略化したりと様々な工夫をして販売促進に取り組み、前年同期比で 15.2%増の8,556億元と、数字的には好調に見えましたが、その裏は、家電・電子機器 などに政府の補助資金が積極的に投入された結果とも言え、そろそろ息切れが心配される事態となりました。また、期間を長くしたことで一日当たりの消費量が減少し、熱狂的ムードが薄れ、消費者の購入意欲にも陰りが見え始め、売る側も販売量が増加する一方、利益は伸び悩む傾向が垣間見られました。 また、人民ネットの「人民投訴」の統計によると、同期間に合計1.4万本の苦情があり、配達の遅れ、システム障害、クーポン券の無効、アフターサービスなどに多くの苦情がありました。売り上げを伸ばすことに血道をあげることで、サービスがおろそかになっている傾向が見られます。前出の郭華麗氏の分析の1~3はプラスの可能性のみを列挙していますが、その一方で、国民は社会保障の不足と将来への自衛から消費マインドが縮小に傾いており、とりわけ、消費の最大のよりどころである中間所得層が疲弊すれば、先行きに暗雲が漂います。手駒を使い果たす前に然るべき対策を立てなければなりません。また、売らんかな、一点張りのセールが招いているのは、「0元セール」や「1元早い者勝ち」など無秩序な低価格競争で、市場監督管理総局が大手ECサイトに注意を促す事態になっています、補助金や値下げ競争に頼らず、消費構造が商品消費とサービス消費の二頭立てに変化しつつある中、消費を再び活性化させるには、郭華麗氏が第4に指摘したような「シーン」の開発が急務になっています。
そんな中で昨今提案されているプランの一つが、多様な「シーン」を生み出す物理的空間の整備。伝統的な市街地区や、風景地区・ショッピングセンター等々様々な空間を活用して多様な消費形態を生み出そうという試みです。都市の広場で音楽会をしたり、旅行を様々なアイテムと結び付けたり、スポーツや健康に関するイベントを街中に呼び込んだり、何とかして“1+1>1”を達成する知恵を絞ろうというわけです。次回は消費の様々なターゲットに向けた試みを見てみましょう。