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第百十九回 中国の海洋政策
2003年5月の国務院による<全国海洋経済発展プラン>は、中国政府が海洋経済の総合的発展を促進するために制定した綱領的文書で、2010年に海洋産業生産がGDPの5%になることを目標にした指導原則と発展目標を示したものです。
人口一人当たりの自然資源が國際平均以下の中国は、海底の鉱物資源に注目していま す。日本でも、マンガン団塊、コバルト,リッチ,クラフトなどが注目されていますが、中国でも、南シナ海で中国の陸地の石油埋蔵量の半分にも達する"可燃氷"(水と天然ガスの結晶)の埋蔵が確認され、2003年末には、中国海洋石油がカナダのハスキ−社と南シナ海深海油田共同探査に合意しました。領海外でも、中国は既に7万5千平方キロの金属団塊鉱区を確保しています。食料面では、陸の自然環境保護の鍵として海の蛋白源が注目され、2002年には中国の海洋漁業と水産品生産量が世界のトップに躍り出ました。
国家海洋局長の王曙光氏は「<発展プラン>により、わが国は徐々に海運強国、船舶工業強国、海塩生産大国、海洋観光大国、海洋石油天然ガス資源開発大国になり、最終的には海洋強国になるだろう」と述べていますが、経済発展に海運の果たす役割りが飛躍的に高まっている中国では、日本同様、シ—レ—ン防衛に海軍の増強も大きなテ−マとなっています。この他、水不足に悩む中国では、海水の淡化も大いに期待されているのです。
中国はまた、領海の海洋機能を十分に活用するため、既存の<海洋環境保護法><海域使用管理法>に依拠して、2002年に<全国海洋機能区画>を制定し、全国の海域を [航行用、漁業用、鉱産資源用、観光用、海水資源用、海洋エネルギ−用、プロジェクト建設用、海洋保護区、特殊利用区、保留区]の10種に分類、[渤海、黄海、東海、南海]の4大地域30海域について詳細に機能分担を決めました。これによって、これまで "無秩序、無節操、タダ"と言われた傍若無人な海の私用に法的な網が被せられました。
2002年11月、中国海洋大学が青島に設立され、海洋事業に必要な人材の育成に乗り出しました。同年、海洋一号A衛星が打ち上げられ、2003年から国家海洋局に様々なデ−タを送り始めています。また、2003年4月には遠洋科学船、大洋一号が初めての太平洋横断資源探査に出航しました。中国の海に賭ける意気込みがひしひしと伝わって来るようです。