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第1190回 中国経済振興政策あれこれ―その3-
(2025年10月9日)
消費を喚起するには、様々な角度から掘り起こしを図らなければなりません。年齢層から見た消費対象の二大ターゲットは、若者と高齢者。例えば、2025年上半期の“銀髪経済”では、地域コミュニティ高齢者介護サービス、施設高齢者介護サービス、在宅高齢者介護サービスの販売収入が前年比、30.4%、22.6%、18%と急速に伸び、歩行器や補助器は32.2%、健康食品薬品類は30.1%、健康モニタリング機器は7.5%の伸びを示しています。また、老後の娯楽消費の伸びも際立っており、高齢者関連観光販売収入は26.2%増加しました。一方で、ネットショッピングのユーザー9.74億人のうち、“90后”、“00后”はそれぞれ95.1%、88.5%を占め、彼らがデジタル消費推進のカギを握るクラスターであることは明白です。若者がデジタル消費を牽引する新しい傾向は鮮明で、ショッピング、知識消費、ゲーム消費といった面でいかにしてその消費意欲を喚起するか、そのシーンの開拓が急がれます。2025年春の全人代政府報告で“AI+行動計画”が打ち出され、“AI+消費”を急成長させる方針が打ち出されましたが、その主要ターゲットが若者であることは言うまでもありません。消費喚起には様々な方策が講じられていますが、その一つが、ここ10年来急速に各地域に波及した“夜間経済”です。特にこの夏は、重慶市で4月以来、毎週土曜日に数千機ものドローンが夜空を彩り、様々な図柄を夜空に描き出したり、江蘇省で、地域のサッカーリーグの夜間開催に合わせて様々な出店や出し物が企画されるなど、各地で様々な取り組みが行われました。
消費内容のもう一つの変化が「モノの消費」から「情緒的消費」への変化です。旅行以外にも楽しみや安らぎを求める動きに政府も注目し始めており、従来からの健康消費やアウトドアスポーツに加え、2015年に63億元に過ぎなかったペット産業の市場価値は、2023年には600億元に達しています。また、ここ数年、グッズ経済が急速に拡大し、ブラインドボックスも増えています。最近見かけるようになった新しい言葉が“票根経済”。“票根”とは映画、演劇、鉄道、飛行機などのチケットの「半券」、つまり「チケットの控え」で、これを提示することで周辺の商業・飲食・宿泊・観光施設などで割引や特典を得られる仕組みは最近のはやりの一つ。まさにあの手この手で必死に消費振興を図っていることがわかります。