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第1191回 中国知財権戦略、この2年―その1-
(2025年10月16日)
2023年11月に本欄で<中国知財権戦略、この3年>と題して、二回にわたり執筆しました。 それから2年、中国は対米交渉に苦慮する中、知財権戦略の強化に一層力を入れています。2024年、中国は104.5万件の発明特許を承認(前年比13.5%増)し、第14次5ヵ年計画目標を繰り上げ達成しました。注目すべきは、従来、中国企業の欠陥といわれていた企業の発明特許産業化率が53.3%(2020年44.9%)に達したことで、着実な向上を遂げています。国際的にも、2024年の世界PCT(特許協力条約:世界知的所有権機関)申請総量27.39万件(デジタル通信関係が10.5%)のうち、中国は700160件とアメリカの54087万件をはるかに上回り、世界一を占めました。企業別では、中国のファーウエイが6600件でトップ、次いでサムソンが第二位を占めています。平行して、同年の中国研究開発投入強度は2.68%と過去最高を記録しました。戦略的新興産業には特に力を入れており、TCLは2024年に3662件の発明特許を申請、新型半導体やスマート端末などの分野で急速に競争力のアップを図っています。こうした躍進の背景には、政府の強力な後押しがあります。2023年には139項目の知財強国建設綱要実施推進計画」を発表し、法整備を急ぐ一方、行政や司法が一致協力して知財権の保護に注力し、併せて知財権市場の運用強化の具体的な方策を提示しました。2024年1月には改正特許法実施細則が施行され、2020年に改正された特許法の具体運用について規定され、更に110項目にわたる「2024年・知財強国建設推進計画」では、AIを用いた審査・検索や立法改正の推進、審査の質の向上などの項目に関する年次作業内容も示されました。イノベーション支援を強化するために、政策運用としての知財担保融資の拡大も図られ、知財を担保とする融資残高は2023年には75%増、2024年に入っても、上半期57%増と急増していきました。
2025年になると、「知財強国建設推進計画」がさらに踏み込んで、商標法改正の推進、特許で保護された、標準規格を実現する上で不可欠な標準必須特許に関する所有側と使用側の交渉に関する紛争を防ぐための政策ガイドライン、AI活用の審査高度化等を掲げました。このほか、商標不使用による取り消し申し立ての乱用を防止するために請求側に詳細な「予備的証拠」を求める商標不使用取消の実務ガイド改訂や、デジタル経済に対応した反不正競争法の大幅な改正も行われました。次回はさらに掘り下げた分析をしましょう。