トップ > 現代中国放大鏡
Last Update:
第百三十八回 当世弁護士事情
2003年、第10期政治協商会議に初めて4人の弁護士が参加して話題になりました。中 国で弁護士制度が復活したのは改革開放がスタ-トした翌年の1979年。現在、弁護士総数は10万2千人に達し、その活躍する領域も、一般の刑事事件や婚姻・相続などの家庭 問題から消費トラブル・売買契約、更には企業合併、・証券取引へと広がっています。しかし一方で、弁護士活動に対して様々な障壁が立ちはだかり、その活動を妨害してきました。
2004年2月、最高人民検察院は<弁護士の刑事訴訟における合法的業務の履行に対する人民検察院の保障規定>を発布しました。"三難"(「被疑者への面会」「事件資料の閲覧」「証拠調べ」の難しさ)の解消を目的に、弁護士への協力を詳細に規定したも のです。珠海では3月1日から、弁護士の活動をバックアップする地方法規として全国で初めて<珠海市弁護士職務執行保障条例>が施行されました。最近、市民派弁護士 の活動がニュ-スとして伝わって来ましたが、裁判で弁論をさえぎられたり、資料収集 が機密漏洩罪に問われたり、暴力行為を受けたりという妨害が日常茶飯事です。2004年春の全人代で憲法に書き込まれた「人権の尊重と保障」が生かされるかどうか、前途多難と言わざるを得ません。
他方、弁護士のモラルや"黒律師"(偽弁護士)の問題も看過できません。2004年3月、最高人民法院と司法省が裁判官と弁護士の癒着を正す規定を発布しましたが、そうしなければならないほど馴れ合いが深刻なのです。また、弁護士の費用徴収方法も違法 が横行し、司法省は今春<弁護士事務所費用徴収手順規則>を出し、規制に乗り出しました。
法治国家の建設を掲げる中国ですが、全国で弁護士不在の県はまだ206県にも達します。2003年10月の第2回国家司法試験では19万7千人が受験し、1万7千人が合格(合格率8.75%)しましたが、21世紀になって初めて「司法試験に合格しないと裁判官、検 察官、弁護士になれない」と規定された中国では、司法関係者の人員不足、更には質の改善(今回の試験で、ある地方の裁判所では裁判官全員が不合格だった)が急務となっています。その意味で、司法試験にかけられる期待は大きいのですが、その司法 試験をめぐる不正疑惑や急増するインチキ講習会などの便乗商法に如何に対処するかは、制度の根幹に関わる問題であり、まさに国の威信が問われていると言えましょう。