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第百四十二回 湿地保護
2003年末、国務院は<全国湿地保護プロジェクト計画>を承認、湿地保護に対する考え方・目標・重点措置などを明確に提示して、湿地保護に対し具体的な第一歩を大きく踏み出しました。<計画>によると、2004〜30年の間に、140万ヘクタールの湿地を回復させ、湿地保護並びに合理的利用国家モデル地区を53箇所建設し、全国湿地保護区を713箇所に増やし、90%以上の天然湿地に効果的な保護を加える、などとなっています。
<計画>は、全国の湿地を八大地域に分け、それぞれが抱える異なった条件や問題 点に沿った対策を提案すると同時に、以下の五大重点プロジェクトを打ち出しました。
- 湿地保護優先プロジェクト:自然保護区の建設・管理の強化や汚染防止システムの 整備。
- 失地回復優先プロジェクト:水資源の管理の強化と植林など湿地再生への様々な施策。
- 持続的利用モデルプロジェクト:湿地保護と農牧漁業への合理的な利用の共存を模索。
- 地域社会建設優先プロジェクト:非資源消耗性産業を発展させ、湿地住民の移民も 推進。
- 能力建設優先プロジェクト:湿地観測システムの構築、宣伝と人材育成、研究の充実。
長江、黄河、などの源流、青梅省三江源地区には7万平方キロ以上の湿地があり、それぞれの水量の25%・49%を供給していますが、気候の変動や乱開発のツケで、4000 余りあった湖沼は半分が涸れ、長江・黄河とも流量が4分の一前後減少しました。また、水辺の動物が激減し天敵がいなくなったことで野鼠などが大繁殖、その被害は草 原の17%に及んでいます。黄河デルタ地域では、黄河の水量減少・工業の発達・耕地 の拡大・人口の急増などで湿地が3万ヘクタ−ルも退化し、北京では、最後に残った天然湿地、石橋ダム湿地も風前の灯になり、対策が急がれます。こういった情況の下、 丹頂鶴の生息で知られる黒龍江省の湿地では、他の河川からの水の調達や住民移転による湿地回復が図られていますが、これらにかかる膨大な費用をどう捻出するかが次 の大きな問題になっているのです。