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第百四十五回 知的財産権-その2:商標権をめぐる情況
2003年秋の第94回中国輸出商品交易会(広州交易会)のことです。大会本部は参加企業に大会規定の遵守を求め、<苦情受付センター業務概要>を配布して、商標権侵害について厳しく調査する方針を提示しました。特に日本のサンリオの“HELLO KITTY”商標権について、マークや図案を侵害しないよう注意が喚起され、また、軽工業関係では35のブ−スで違反商品が摘発され、撤去を命じられました。
続いて2004年4月26日、商標局は国内商標権侵害十大案件と対外関係商標権侵害十大案件を発表しました。対外関係案件の中には、ナイキやアディタスへの侵害とともに“HONDA” “SONY” “SUZUKI”に対する商標権侵害も含まれていました。統計によれば、2003年の商標に関する違反案件は37489件、そのうち商標権侵害案件は26488件ということですが、罰金の総額が2億4千万元、刑事責任を追及された案件が45件という数字も併せて、これが氷山の一角に過ぎないことは言うまでもありません。
WTOに加盟し、更に対外開放を進め、外資や先進技術の導入を図る中国にとって、知的財産権の保護が不可欠の条件であることは論を待ちません。中国は既に<工業所有権の保護に関するパリ条約>に加盟し、更に、國際登録された商標の保護を約束する<マドリッド協定議定書>も批准していますので、その履行を強く求められるのも当然でしょう。
ただ、トヨタが商標権侵害で吉利を訴えた例や奇瑞QQのGM・SPRK外観設計模倣疑惑といった最近の案件からもわかるように、外国の技術に頼っているうちは模倣による商標権侵害問題が後を絶つことは無く、知的財産権の自主開発が何よりも急がれます。
一方、商標権に対する国内企業の無知、認識不足により、中国が相当な不利益を被っているとする被害意識や焦燥感も露わになってきています。医薬で有名な同仁堂が国際市場で偽物に先を越されたり、五星ビ−ルがアメリカで先に商標登録され、やむを得ず“九星ビ−ル”として売らなければならない羽目に陥った例は、商標登録が遅れたことによる典型的な例と言えましょう。そこで政府は、2004年3月1日、修訂<知的財産権税関保護条例>を施行、知的財産権保有者に、税関へ積極的に保護申請をし、法律面でしっかり武装して国際市場に進出するよう呼びかけています。