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第百五十回 “CEPA” 1年の歩みと香港-その2-
CEPAは、内地と香港の関係の緊密化を目的としていますが、中でも中心となるのが広東省との協力と一体化です。広東省の製造業と香港のサ-ビス業は補完関係が高く、既に香港が取り扱う貨物の78%は珠江デルタ地区で生産されたものであり、2004年前半、両者の間では、税関の協力関係の強化・投資の促進・両者をつなぐ様々なインフラ整備などが精力的に推進されました。
2004年6月、CEPAを中心に据え、更に雄大な構想がスタ-トしました。いわゆる<汎珠三角>構想です。これは重慶市と湖北省を除く中国南部の各省・自治区(江西・湖南・福建・広東・広西・貴州・四川・雲南・海南)に香港と澳門を加えた<9+2>で構成される巨大経済圏で、全国の5分の一の面積と3分の一の人口を占め、GDPの3分の一以上を占める9省の経済力に香港・澳門の経済力が加わるのですから、その影響力が周辺に与えるインパクトは想像を遥かに超えたものになるでしょう。
その一方で、繁栄する長江デルタ地域と香港の協力関係も急速に進展しています。2004年の最初の2ヶ月で、上海に投資された外資の3分の一を香港が占め、1月〜5月の間、毎日10万ドルの香港無関税商品が上海から内地の市場に流入しています。できたばかりの外高橋保税物流パークのうち6.5万平方メートルがいち早く香港企業に買い占められた、というニュースも伝わっています。
2004年4月2日、第10期全人代常務委員会第8回会議は、<香港特別行政区基本法>の、2007年以降の香港特別行政区行政長官と立法会の選出方法に関する条文に対する見解を発表し、「直接選挙を実施するにはまだ機が熟していない」との判断を示し、かつ、この法律の解釈権は全人代にある、と念を押しました。今、直接選挙に移行すれば、親中派の敗北は濃厚であり、先手を打ったものと言えましょう。
CEPAの実施と、それに伴う急速な一体化戦略は、ともすれば政治的に内地と距離を置こうとする香港を経済的に抱き込み、不振の続いた香港経済を建てなおし、香港市民の歓心を買おうとする側面も見えます。香港と内地の一体化の成否が、その先に横たわる中台問題への大事な試金石なることは言うまでもありません。