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第百五十一回 人口問題が抱える新しい難問
2030年に人口が14億5千万人のピークに達する中国。厳格な一人っ子政策で出生率は大幅に低下したものの、逆に高齢化社会の急速な到来を招き、2050年には人口の4分の一が老人になると言われています。そこで、最近は政策にやや弾力性を持たせ、第一子が女児であった場合は第二子を生んでも良い、といった規定がほぼ全国で条例化されました。なぜ、「第一子が女児であった場合は」に限り認めるのでしょうか。
実は、今、中国で大問題になっているのが、いびつな男女の出生比率。1970年代、中国の男女出生比は正常範囲(女性100に対し男性103−107)でしたが、80年代からこの比率が崩れ始め、2000年の第5次国勢調査では、119.92と、1990年に比べ8.5ポイント増加しました。現在では、人口の9割を占める24の省・自治区・市で軒並みこの値が110を超えています。
こういった状況を踏まえ、国家人口計画生育委員会は、2003年から<女児を大事にする運動>を始めました。2004年2月に北京で開催された<女児を大事にする運動フォーラム>では、<素晴らしい未来のために>という今年のテーマを採択し、全国的な運動を展開することになりました。また、3月11日に終了した国家人口計画生育委員会主任会議では、当面及び今後一定時期の人口計画生育活動の三大主要任務のひとつとして、人口性別比問題の是正を掲げました。
異常な数値の背景にあるのは、中国社会に根強い男尊女卑。特に農村では、労働力の確保、老後の養育の問題等に対する不安が、男児を欲しがる主要な原因となっています。しかし、最近の急激なアンバランスの直接的原因は、超音波による胎児の性別判定とそれに伴う女児の堕胎で、このままでは、将来、結婚できない男性が急増、その結果、女性の誘拐やいびつな性風俗がはびこる引き金にもなりかねないと、超音波測定とそれに伴う堕胎を取り締まる法律の制定が叫ばれています。
「第一子が女児であった場合」の優遇措置には、一定の堕胎抑制効果があるかもしれませんが、一方で男尊女卑の観念を肯定したことにもなります。女児の素晴らしさを認識させ、将来の生活に不安を生じさせない事が出生比是正の鍵になると思われます。