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第百五十四回 2004年の経済政策の動向分析
この10月28日、中国の中央銀行である中国人民銀行が法定貸出金利を0.27%引き上げ、1年物の法定貸出基準金利を5.58%に、定期預金の金利は2.25%とするというニュースが伝わりました。それぞれ9年ぶり、11年ぶりの利上げになります。
この背景には、GDPの目標を上回る実質成長と、消費者物価の急上昇があります。2004年3月、国家発展改革委員会の馬凱主任らは、2003年の中国の成長速度9.1%について、「世界のGDPの4%に過ぎない中国が、世界の7.4%の石油、31%の石炭、27%の鉄鋼、25%の酸化アルミ、40%のセメントを消費」と問題提起し、「7%程度の成長速度が適当」との見解を示しました。しかし、7月〜9月の実質成長率は公式発表で昨年並みの9.1%、実際はもっと高いとも言われています。物価も、「6ヶ月以上0%を下回ればデフレ、3%を上回ればインフレ」というガイドラインに対し、最近は5%台で推移しています。
2003年、中国の固定資産投資の伸び率は26.7%でしたが、2004年の最初の2ヶ月では前年比53%という数字を記録しました。新規着工プロジェクトが7816件と前年同期より3002件も増え、中でも突出したのが、不動産開発、都市建設、電力、化学工業などで、鉄鋼に至っては172.6%増という驚異的な増加となりました。また、中央のプロジェクト投資の伸び率が12.1%であるのに対し、地方のそれが64.9%と際立って突出し、地方の権力者がいわゆる“形象工程”「イメージプロジェクト」や“政績工程” 「業績プロジェクト」に狂奔したことを如実に反映しています。
このような状況に対処すべく、政府はこれらの分野の固定資産投資プロジェクトの資本金比率を高め、江蘇鉄本鋼鉄社の乱脈プロジェクトを摘発するなどプロジェクトに対する厳しい洗い直しを行いました。7月の国務院常務会議では、上半期の経済情勢を総括し、これ以上の新しい措置を講じなくても、軟着陸できる、との自信を示しましたが、地方の反発、抵抗は意外に根強く、強権発動的対策に対しては「市場経済の原則に反する」という批判の声が上がり、政府も対策に苦慮していたのです。ここ数ヶ月、新聞で、“宏観調控”「マクロコントロール」という文字を目にしない日はないほどですが、久しぶりの金利の引き上げというてこ入れが所期の効果を生むか、結果が注目されます。