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第165回 民工荒
2004年、“民工荒”(出稼ぎ労働者不足)が珠江デルタで俄かにクローズアップされました。9月には広東省だけで200万人の不足が伝えられました。ある家具製造企業ではアメリカからの注文の3分の1しか達成できなかったとのこと。労働・社会保障部は早速原因調査を行い、主な原因として、靴や玩具の製造、服装やプラスチックの加工といった労働集約型産業の価格競争力維持の為の低賃金体質(珠江デルタでは12年間で平均賃金のアップがわずか68元)や、劣悪な労働条件(無契約・長時間の残業)等を挙げています。労働者不足は2、3年前から起き始めましたが、特に中小私企業、台湾企業などで目立っています。これらの企業は月給500〜600元で一日10〜12時間以上働かせ、食住費は別払い、保険もかけず、しかも逃亡防止のため身分証を取り上げるなど、搾取とも言うべき過酷な人事管理が特徴です。その一方で月給が1000元以上の企業では、労働者不足は目立っていません。
2004年7月に広東省労働就業サービス管理センターが同省8市306企業に行った調査でも、128社で技術労働者が1万8千人不足、166社で普通労働者が8万7千人不足しているとの結果が出ました。ただ、306企業の4分の1が月給600元以下で、約半分が600〜800元にとどまり、70%以上の企業が10時間以上の労働を課していたそうです。
このような現状に対して、識者は、1994年制定のままの現行<労働法>の不備を指摘しています。まず、その適用範囲に“民工”が含まれていませんし、戸籍による差別が更に追い討ちをかけます。また、労働時間の延長や給与額の決定に関しても、曖昧な規定の為、経営者の大幅な裁量が可能になってしまっています。農民が安心して出稼ぎに出られるよう政府が厳格に法を整備すれば、農村からの労働力の供給が不足するはずはない、というのです。実際、江西省では出稼ぎ者の支援を強化、出稼ぎ者が増加しています。
2004年12月1日、広州市は2002年に決めた510元の最低賃金を684元に引き上げました。これは、社会の平均賃金の40〜60%を最低賃金とする国際的慣例に沿ったもので、妥当な線と言えますが、市内の大部分の労働集約型企業は、コストの増大により企業が郊外に移転せざるを得なくなる、と反発を強めています。