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第176回 農村金融体制と信用社
中国農村金融体制改革のカギを握るのが“信用合作社”[信用組合]の改革。近年、国有の各商業銀行が経営立て直しに続々と農村部から撤退、加えて郵貯が毎年農村から一定の資金を吸い上げた結果、農村資金が都市へ大量流出し、また、本来農民が農業改善に必要な資金を得る主要ソースであった信用社は旧態依然とした放漫経営で小口ローンが大量に焦げ付き赤字に転落、農村金融の需給バランスが大きく崩れました。
信用社と農業銀行の主要な違いは、後者が農産物の加工や農業産業化に資金を提供するのに対し、前者は栽培業に従事する生産農家を金融支援するところにあります。農村の発展を最優先課題とする政府にとって信用社改革は当面の急務となり、その第一歩として、 各地で“信用戸” “信用村” “信用鎮” などが認定され、信用度に応じ貸付金額を決め、貸付精度の向上が図られました。農民側にも、農家が共同体を結成して融資を受ける“農戸信用聯合体”が出現しました。この他、企業統治の確立・従業員採用資格の専門化・従業員教育の充実・ノルマ制の導入など、次々に改革方針が打ち出されました。
2003年6月、国務院は、省レベルの“信用聯社”・県レベルの“統一法人社”・“農村合作銀行”・“農村商業銀行”など新型金融機関育成による健全な財務会計制度の確立を目標に<農村信用社改革推進試案>を打ち出し、吉林・浙江・貴州など8箇所をテスト地域に指定、更に<農村信用社監督管理職務分担に関する指導意見>を出し、各機関と行政レベルの責任範囲を明確にしました。銀行監督管理委員会も、関係諸機関と協力して各金融機関の管理規定を整備し、同時に信用社の不良資産処理に本格的に取り組み始めました。
新型金融機関の中で特に重視されているのが農村合作銀行です。農村合作銀行の株には、表決の際一人一票の“資格株”と持ち株比率に応じる“投資株”とがあり、大株主にのみ左右されず、多数の農民の意向を反映できるからです。2003年3月、寧波市に中国初の農村合作銀行が誕生、2004年5月には貴州省花渓農村合作銀行が、8月には浙江省で更に2行成立と、この動きは各地に広まっています。
2004年8月、国務院は改革を21の省や市に拡大する方針を決定、10月にはその準備会議が瀋陽で開催されました。2005年はまさに農村金融改革の正念場となることでしょう。