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第178回 都市の治安
経済の急速な発展と社会構造の変化は社会の治安にも新しい問題を醸し出しています。経済事犯の急増や交通事故の多発といった問題が生じる一方、農村からの大量の流動人口による都市の治安の悪化も無視できません。経済発展が特に目覚しい沿海地区では、治安の良し悪しは外資系企業にも大きな影響を与えます。
2004年、全国の公安機関は、経済事犯の摘発・学校の安全確保・ネットの違法メールやインターネットカフェの取り締まり・風俗営業の取り締まりなどとともに、殺人事件の解決や麻薬取締りを最重点に掲げ、更に、中央から地方に至る各公安機関が定期的に報道機関や一般大衆向けにプレス発表を行い、適宜に重要な情報を流す制度を設けました。
このような動きの中で、各自治体は独自の治安対策を積極的に進めるようになり、2004年9月には、北戴河に全国30近くの都市の治安関係責任者が集り、<安全な都市を建設しよう>と言うスローガンを掲げてそれぞれの経験を交流しました。ここでは、治安対策で特に著しい効果を挙げている山東省を例にその取り組み方をご紹介しましょう。
2004年、山東省は3年で“平安山東”を建設するという方針を打ち出し、2月からその活動を正式にスタートさせました。“平安山東”は各地の行政組織と住民の協力をベースに、市・県・郷鎮・村・社区・企業・キャンパスなど様々な単位で幅広く展開されました。全省2289の郷鎮に総合治安対策専門のオフィスが設置され、公安局は3分の2の警察官を現場に配置、各村に警察官を常駐させてパトロール体制を強化すると同時に、有償・無償の5つの支援組織(保安・パトロール・補導・揉め事の調停・法律の宣伝)を立ち上げ、<治安請負責任制>を実施し、治安員の派遣や治安情報員の選任も行いました。
一方、犯罪を未然に防ぎ治安を向上させるため、県・郷・村の三段階で調停ネットワークが築かれ、庶民の不満解消に努めた結果、中央への上訴案件も大幅に減少しました。また、監視カメラの設置やGPSを使った効果的な操作網の展開などハイテクを駆使したシステムも構築されています。
山東省に負けじと、北京市や江蘇省・浙江省でも“平安”政策が積極的に推進されています。治安問題は、北京オリンピックに向けて今後益々クローズアップされるでしょう。