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 第194回 動き出した遺棄化学兵器の処理

先日(8/24)、内閣府の遺棄化学兵器処理担当室が、処理事業映像記録作成業務の民間委託公開入札のお知らせをホームページに掲載しました。難航していた処理問題が漸く動き出した事を実感させるニュースです。
遺棄化学兵器処理問題が日中間のテーブルに載ったきっかけは、97年に発効した国連<化学兵器禁止条約>。同条約第一条第三項には「締結国は他の締結国に遺棄した全ての化学兵器を破棄することを約束する」とあり、「条約発効から10年以内に処理を完了しなければならず、特殊事情の場合は15年まで延長できる。」としています。これを受け、両国は共同作業グループを設置し、99年7月、遺棄化学兵器処理に関する覚書に調印、日本は内閣に遺棄化学兵器処理担当室を設け、最低年一回政府級協議を、専門家の会合は毎月行ってきました。遺棄数については、中国側の主張200万発、日本側70万発と食い違いますが、数の問題はとにかく、早く処理することが主眼とされました。
ただ実際の処理では多くの困難に直面しました。2次汚染の防止は当然として、日本軍の遺棄化学兵器は除去しにくい有毒物質アルシンを含み、しかも非貯蔵型で、河や湖に捨てられて腐食も進んでいます。2003年4月の日中共同作業グループ会議で漸く処理方法・処理地点などで合意しましたが、そうこうしているうちに同年8月4日、黒龍江省チチハル市の建設現場地下2mで発掘された5つのドラム缶からマスタードガスと思われる気体が発生、41人が入院、1人が死亡するという大事件が発生してしまいました。
こうした状況を受け、同年11月、初めて日中が協力してチチハルで724発の砲弾の大規模な密封処理が実施され、翌2004年4月、日本政府は“遺棄化学兵器処理対策連絡調整会議”で、吉林省ハルバ嶺に大規模な処理施設を建設する決定を下しました。しかし、その後、各地で発見される砲弾をハルバ嶺まで運ぶ危険性が指摘され、2005年4月になって、チチハル・ハルビン・北京・南京など12箇所に小規模な処理施設を建設すること、トレーラーを使った移動式処理施設の導入などが検討され始めました。ただ、その一方でとっくに出来ているはずのハルバ嶺処理施設は、両国の調整が手間取り、なんとこれから着工と言う状態。日本政府に義務付けられている期限、2007年4月はもうすぐそこなのですが。

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