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第196回 中国医学の取り組み—その1—現代化
2004年の全国中医薬工作会議で呉儀副首相は「中医薬の理論と技術をより発展させ、現代化・市場化・国際化を進める」よう呼びかけ、中医薬関係業務を重要な議事日程に組み入れるよう各地に指示しました。現在、中国の中医病院は2868ヶ所、医師は27万人、2003年の延べ診療者数は2億6百万人で、農村部では多くの農民が“簡・便・廉・験”といわれる中医薬に頼っており、サーズやエイズの治療でも効果を発揮しています。
中医は海外でも注目され、1996年にはアメリカ食品薬品管理局が鍼灸を治療方法として承認、2000年にはオーストラリアで<中医薬法>も制定されました。WHOの<世界伝統医学発展戦略>でも中医と鍼灸は高く評価され、世界各国との合同プロジェクトはここ数年で300近くに達し、現在、世界で中医医療機構は5万あまり、10万人の鍼灸師・2万人の医師が治療に携わっています。
その一方、中医薬界の現代化の遅れは深刻で、様々な学派・学説の整理体系化と<黄帝内経>など古漢語で書かれている中医の経典の現代語訳も急務。また医師の試験に西洋医学の知識が不可欠なため、多くの中医の医者がもぐり営業となり、しかも西洋医学に比べ検査費や薬代の儲けが少ないため、営利主義に走る病院からは敬遠されがちです。このままでは「中医を排して中薬だけがのさばる日本の轍を踏む」とは専門家の警告。
2004年、現存する8千種あまりの中医薬古書の、版本の異なる3万種あまりの調査が終了し、国内では失われた146種の資料を補足した<1100種中医薬珍本秘本整理救済プロジェクト>が完成、同時に<中医薬珍善本古籍マルチメディアデータバンク>も整備されました。また2005年からは、国家中医薬管理局による百名の<中医老名医の学術思想と臨床経験の継承研究>というテーマも始動しました。海外への普及という面で特筆されるのは、70年代に日本語に翻訳された<本草綱目>の英訳が、羅希文氏によって30年余りの歳月を費やして2004年に漸く完成したことでしょう。
現在、中国中医研究院は中医・中薬・鍼灸・古文献データバンクの整備に取り掛かると共に、国家中医薬管理局伝統医薬立法工作弁公室を開設、2005年末には伝統医薬法案を起草する予定で、その成果が大いに期待されています。