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第197回 中国医学の取り組み—その2—薬材
2001年7月、中国政府は<薬用植物・製剤輸出入安全産業基準>を施行し、中医薬輸出振興に踏み出しました。既に同仁堂は海外に17の支店を持っていますが、中医薬が21世紀の重要輸出産業になるには、鉛の含有量や残留農薬の基準超過など品質に対する不安の払拭が急務。2003年、<中薬産業国際化戦略研究総報告>は、安全中薬事業の発展を国家発展戦略の中に位置づけ、客観基準の策定を関係部門に求めました。各国の先手を打って中国基準を定め、国際標準に認定させて国際市場での主導権を確立するのが狙いで、既に、欧州・シンガポール・韓国などでこれを認める動きがあります。
2004年1月、まず、中国中医研究院を中心に<中草薬と民族薬標本の収集、整理と保存>プロジェクト(押し葉標本4189種・薬材標本1050種)が完成、今後の開発利用と資源保護に基礎が築かれる一方、国家食品薬品管理局は、不適格な中薬材専門市場は閉鎖も辞さない、という厳しい態度で臨み、中薬材栽培の種子・環境・使用農薬・栽培技術などを定めた第一号<中薬材生産品質管理規範(GAP)検査公告>を公布、GAP認証8社とその栽培品種を発表し、11月には“飲片”(原料を煎じられるよう細かくしたもの)生産企業に2008年からGMP(薬品生産)品質管理規範を遵守するよう求めました。また、中薬材真贋判別用<中薬鑑定デジタル可視化>技術も開発されています。
中薬材の保護と確保も喫緊の課題です。中国の薬用植物11146種の内、野生は80%以上、絶滅危惧種も少なくありません。そこで人工栽培の試みが始まり、2004年、中国中医研究院と陝西省商洛市は、秦巴中薬材良種開発センターを建設して数年以内に西北地区最大の中薬材種苗基地とすることで合意しました。最近では、江蘇省農業科学院が“冬虫夏草”の人工栽培に成功、“黄連”も湖北省利川市で初めて栽培に成功した、と報じられています。
2002年に<中薬現代化発展綱要>が出されてから2年間で中薬に関する特許申請は7400件あまり、新薬の承認も203種を数え、2004年11月には、中薬材の生産・中薬工業・中薬科学研究を目的とした国家中薬現代化科学技術産業基地を浙江省に建設することが本決まりになりました。また、中薬材専門学科を開設する大学も数大学から100大学あまりへと急増していますが、教員不足による質の低下を招かない工夫も求められます。