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第二十二回 工会(労働組合)
<土地改革法>、<婚姻法>とともに、三大法律の一つとして1950年に制定された<中華人民共和国工会(労働組合)法>。1992年に改訂されたものの、当時は<社会主義市場経済>がやっと本格化し始めたばかりで、外資企業や私営企業までは手が回らず、年毎に現実とのずれが目立ってきました。
そこで政府は昨年10月末の第9期全人代第24回常務委員会で、新たな規定を盛り込んだ修訂版<中華人民共和国工会法>を採択しました。そして、まず「労働者の権利を守る」という“工会”の基本的役割を明確にした上で、「25人以上の組合員がいれば“工会”を作るべきで、25人未満の場合は作って良い」と規定しました。中国の“工会”は、2000年末で組合員数1億3百万人と世界最大を誇りますが、それでも全国の労働者の半分に過ぎません。しかも、90年代以降、企業の所有形態の多様化が進んで組織が弱体化し、組合員の減少傾向に歯止めをかけることが焦眉の急となっていたのです。
次に、不当解雇などの企業側の報復行為から“工会”の代表や幹部を守るために、保護規定が整備されました。また、一定の範囲で専従幹部も認められ、正当な組合活動を擁護する環境が整えられました。
更に、企業側が、全従業員の給与の2%分を“工会”の費用として提供することも明記されました。転職が当たり前の今の従業員たちは、将来、世話になるか分からない“工会”に自分で組合費を払ってまで入会しようとしないからです。会社に費用を負担させれば、独立性が損なわれるわけですが、背に腹は変えられない、といったところでしょう。
企業と労働者側が対等の立場で賃金や労働問題を話し合う制度も急速に広がっています。既に昨年末で全国50万社以上がこの方式を採用しており、また、現在、12の一級行政区で、政府、“工会”、企業三者合同の労働関係調整会議が制度化されるに至りました。
中国では今、“企業治理”(コ−ポレ−トガバナンス)の構築が叫ばれていますが、その中で“工会”がどのような役割を担うことを期待されているのか、背後に有る政府や共産党との関係はどうなるのか、中国進出企業にとっては目が放せない問題といえましょう。