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第222回 第11次5カ年計画−その3−
(2006年3月20日執筆)
第4は開放型経済を一段と推進し、国際収支のバランスを取ること。人民元レートの動向や資本市場開放の進展度と並び、企業の財務処理やコーポレートガバナンスなどが絡む証券市場の透明度アップも厳しく問われます。2005年末の国民の貯蓄高は14兆元を突破したと中国人民銀行が発表しましたが、同行が実施したアンケート調査では、その主要な原因の第2に金融投資対象が不十分であることが挙げられています。
第5は9年制義務教育の普及と就業対策や貧困対策を含めた社会保障政策。このところ農村義務教育の無料化、教材無料支給(使用済み教科書供出キャンペーンも含む)などのニュースが各地から聞かれますが、217号コラムでも書いたとおり、2006年から農業税が廃止され、同時に各種費用の徴収も禁止された為、手じかな収入を失った農村幹部が形を変えた収入源確保に狂奔しており、これをいかに防ぐかが大きな問題になります。
第6は都市・農村の収入アップと生活の向上・生活環境の改善です。最大の課題は言うまでもなく農村問題。“民工”(出稼ぎ農民労働者)問題は別の機会に論ずるとして、最近の農村政策で評価すべきは交通等のインフラ整備。“十五”期間中4178億元を投じ、全国各村々の自動車道路開通率は95%近く、郷鎮へのバスの運行率は98%に達し、“十一五”期間中には更に1000億元が投じられます。また、農村電話プロジェクトも進み、2004〜5年で全国37741の村に電話が通りました。電力の普及とあわせ、農村における産業活性化と消費市場形成を可能にするインフラが徐々に整備されてきたと言えましょう。
第7は民主的法制度と精神文明(モラル)の確立がうたわれています。
中国社会調査所が行った2005年の民意調査で、“幸福感”に関する満足度 は前年比8.7%増の47.6%、項目別では中国の国際的地位への満足度が74.4%と際立って高く、物質生活水準は48.5%と半数が満足、反面、住居環境には20.5%と低く、モラルに対しては38.2%が積極的な不満を表明しています。土地をただ同然で奪われ、流浪する農村の余剰労働者が大量に発生している一方、標準体重超過者2億人、超肥満者3900万人と都会部を中心に豊かさのツケも目立ち始めた中国。貧富の格差解消を含め、どうやって調和のとれた社会を構築していくのか、今後の5年間はまさにその念場になることでしょう。