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第235回 義務教育改革−その2−
(2006年6月26日)
家庭の教育経費の30%を占める教材費の負担を減らすため、現在、教材出版体制の改革が行われ、公開入札制のテスト導入が11の一級行政区に拡大、2008年には全国的に実施されることになりました。過去、全国の新華書店の利益の70%以上が教材発行によるもので、地域の様々な利権が絡み勝手な価格がつけられ、教材費高騰の原因になっていました。
大都市では、学校の教師が、教室では大事な内容は教えず、副業でやっている学習班に来ないとテストで困るように仕向け、荒稼ぎをしている事例が数多く摘発されていますが、教育を商売としか考えない風潮の蔓延はなんとしても阻止しなければなりません。
一人っ子全盛時代の中国では、親の期待に押しつぶされた子供の自殺や犯罪が増加。そこで最近、子供の負担を減らす様々な取り組みが始まっています。既に教育部は2004年に、小学1、2年生は宿題を出さない、3年生以上は1時間相当、中学1、2年生は1.5時間相当と定めましたが、2006年の旧正月には、各地で補習を厳しく制限する通達が出されました。北京では、違反した高校はモデル校の称号を取り消すことも有りうる、と警告、江西省では、中学・高校とも3年生は7日以内の補習を認めるが、其の他は認めない、とのこと。また、上海市では、2006年の新学期から小学校1、2年生の国語のテキストから14篇を削り、学習漢字数を205個減らすなど、学習内容の負担軽減も始まっています。
河南省鄭州市では、教育の機会均等をと、従来、進学率を主な基準としていた「名門校と普通校」「重点校と非重点校」という名称を無くし、在校生の親の各1票に現地市民の50票を加えた投票を実施、上位30%の学校に「人民満足学校」の称号を与えることとしました。北京市も各大学が協力して小中学校に専門家を派遣、教育内容・教育環境が不十分な学校を支援し、2008年には均等化を実現して、学校選びの弊風を打破しようとしています。
ところが、一方で問題も。浙江省杭州市の小学校が、平常の学習状況が優秀な生徒に対して期末試験免除制度を導入したところ、子供のテスト慣れを阻害する、と言う親の反対が強くて全くの不評。“優等生吃得飽,中等生吃得好,学習困難生吃得了。”(優等生はおなか一杯食べ、一般生はしっかり食べ、学習困難生は食べきる)という習熟度別教育もチラホラ始まっていますが、しばらくは様々な試行錯誤が続くことでしょう。