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第239回 独占禁止法論議
(2006年7月31日)
中国で“反壟断法(独占禁止法)”が最初に取り上げられたのは、1987年国務院法制局の<“反壟断法”>起草班の設置。その後93年第8期全人代常務委員会第3回会議で<“反不正当競争法”>が可決され、早くも94年には立法計画に組み入れられ、更に2005年まで何度となく計画に組み入れられましたが、一向に陽の目を見ない状況が続きました。“只見楼梯響,不見人下来”(階段の音は聞こえても、人が降りてこない)とはそんな状況を皮肉ってマスコミが流布した言葉です。そんな中、商務部は2004年、日本・アメリカ・EUなど諸外国の実情調査をベースに“反壟断調査弁公室”で検討を進め、2004年には国務院にたたき台を提出、その後も専門家の意見聴取などを行ってきました。
2006年4月、<“反壟断法”>制定に関して各メディアから俄かに議論が巻き起こりました。きっかけは「行政権力を乱用して競争を制限することを禁止する」という部分が削除されそうだ、という情報が伝わったこと。独占禁止法制定の主眼がどこにあるのか、政府や政府と関係の深い国有企業などの主たる矛先は外資に向けられていました。商務部関係筋は<“反壟断法”>で外資が中国の戦略的産業を支配できないように、また、いかなる市場においても大きなシェアを占めないようにしなければならない、と明言しました。
しかし、中国における独占の最大の障害が“行政壟断”(行政による独占)にあることは明白な事実です。いわゆる“官商勾結”(政財界の結託)の弊害の蔓延で、審議中の<郵政法>で民間および外資系の速達業務の非合法化が検討されているのはその好例、との指摘もあります。2006年6月5日の人民日報は<“壟断”産業の収入はどれほど?>という特集記事を組みました。電信・郵政・石油・電力・航空・鉄道など、行政部門や一部の国有大企業が独占している産業分野では、一般とはかけ離れた高額の給与と更に各種のお手盛り手当や特典があり、おかげで就職先としても人気とのこと。これに網をかぶせないのでは、まったくの骨抜きになってしまいます。
2006年6月7日、国務院常務会議は、<中華人民共和国反壟断法草案>を論議し、大筋で承認しました。国家工商行政管理総局の李東生副局長は、成立が期待される<“反壟断法”>には地域封鎖と“行政壟断”も含まれるだろう、との見解を示しました。