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第258回 民工の家庭問題
(2006年12月18日)
2006年8月8日付人民日報に<万余民工子弟何処就学>という記事が掲載されました。北京市海淀区教育委員会が、規定の150万元の開設資金がないことなどを理由に区内の30あまりの労働者子弟学校に閉鎖を通告、一万名あまりの生徒が行き場を失ったとのこと。これらの労働者子弟学校は、政府の援助や民間からの寄付もほとんどなく、市場の一部を借りたり豚小屋を改造したりして施設が不十分なため認可が得らないのです。
海淀区教育委員会はこれらの生徒を近くの小学校で一時収容するとしましたが、物理的に不可能に近く、しかも毎学期の学費が300元程度の労働者子弟学校に対し、一般の小学校は制服だけで数百元かかります。保護者にも通知が出され、7月11日までに臨時居住証・勤労証明・居住証明・本籍地子供介護者不在証明・戸籍謄本を提出するよう求めましたが、ほとんど徹底されていませんでした。このほか、多くの一人っ子枠外の子供は戸籍が無いため公立学校に入れませんし、農民労働者の子弟に対する蔑視やいじめも無視できません。
報道の翌日、海淀区教育委員会は、当面、2000万元を臨時支出し、受け入れ小学校の施設の拡張や、机・椅子また教師の補充を行うとともに、9月の新学期開始時に保護者に対し十分な説明をすることを約束しました。2005年末現在、親とともに流動する児童の数は北京だけで28万人、市の2006年の公立学校収容目標数は23万人ですから、5万人以上の児童があぶれる計算になります。実はこのような現象は全国の都市で発生していて義務教育制度の根幹を揺るがしているのです。
親が出稼ぎに出かけ、農村に取り残されている児童の問題も深刻です。現在、全国の「留守児童」は15歳以下で1000万人。6月1日に発表された湖南省の<農村留守児童調査報告>によると、1200万人あまりの出稼ぎ労働者に数百万人の留守児童がいて、小中学校在校生の60%に上るとのこと。親の62%が2年以上出稼ぎに出ており、9.3%の児童に親を慕う気持ちがなく、喫煙率は27.7%、心理面で問題ありと判定される児童は全体の57%にも達しているとも。一方では、彼らの存在を負担と考える教師の問題も指摘されています。同様の問題は四川省からも報告されていますが、二桁近い経済成長を支える出稼ぎ労働者の家族に対する福祉の向上は国を挙げて取り組むべき待ったなしの課題と言えます。