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第260回 人民日報2006年日本報道から−その1−
(2007年1月9日)
2006年は、10月に安倍首相の訪中というビッグニュースがありましたが、そこにいたるまでの9ヶ月間の中国側の対応振りを人民日報の報道から見てみましょう。
2006年1月4日、日中韓三国の学者の共同執筆による中国社会科学文献出版社『東亜三国的近現代史』が取り上げられました。「これまでの三国の歴史読本はいずれも自国の立場に立っていたが、この本は三国が協力し互いの関係を見据えて考察したもの」で、各国の若者の戦争に対する認識の大きな隔たりを埋めるには勇気が必要だ、と強調し、各国での好調な売れ行きは三カ国の学者の努力が報われた証拠だ、と結んでいます。
日本側の変化を国内に紹介し、反日ムードを和らげようという記事も目に付きました。3/21付けで、52.6%の日本人が次期首相の靖国参拝を望んでいないという産経新聞の調査を、胡錦濤国家主席が日中友好7団体を人民大会堂で接見した3/31には、77.9%の日本人が日中の関係改善を望んでいる、という外務省の国民意識調査を、7/24には毎日新聞の調査で54%、日経新聞では53%の日本人が首相の靖国参拝に反対していることを紹介しました。平行して読売新聞の渡辺恒雄氏が「日本の対外侵略の歴史は確かな事実であり、右翼がどんなに詭弁を弄しても靖国神社がA級戦犯を祀っていること、“遊就館”には軍国主義に対する賛美が溢れていることは紛れも無い事実だ。」と指摘したことも大きく取り上げられました(2/27付)。従来中国側は読売新聞を靖国参拝賛成派と見ていただけに、驚きと歓迎の波紋が広がりました。また5/11付では、経済同友会が9日に<今後の日中関係に関する提言>を発表、日中関係の重要性を強調し靖国参拝に自重を求めたこと、更に7月に入ると、昭和天皇がA級戦犯合祀によって1975年を最後に靖国神社参拝をやめたという事実が富田日記によって明らかになったことも詳細に報じられました(7/21)。
6月末、遼寧省葫蘆島で、60年前の終戦時に中国側が105万人の日本人を「人道主義の立場から無事帰国させた」ことを記念する活動が政府の肝いりで大々的に挙行されたことは、日中関係改善にかける中国側の並々ならぬ熱意の表れで、こういった積み重ねの結果、8/15の小泉首相靖国参拝の報道では、北朝鮮・韓国・ロシアなどの外国や日中友好協会など日本国内の非難を紹介する、といった報道が主になり、冷静な対応が目立ちました。