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第264回 中国のバイオ技術−イネを中心に
(2007年2月5日)
日進月歩のバイオ技術の中で、今回はイネに的を絞ってご紹介します。
水稲品種改良の父、と言えば袁隆平のことを知らない中国人はいないはず。1964年からこの研究に従事し、1976年に水稲交配技術を確立、これを広範囲に応用して単位生産量と総生産量を飛躍的に増大させました。1997年からスーパー交配種の第1期研究に取り掛かり、1ムー当たり700kgの目標を2000年に実現、第2期の目標1ムー当たり800kgも2004年に達成しました。第3期目標は2010年までに1ムー当たり900kg。これまでは通常の交配技術を用いましたが、第3期は分子生物学の技術を応用することにし、既にいくつかの有力な遺伝子が発見されています。
このような動向を踏まえ、2005年中央1号文献に登場したのがイネのスーパー交配種普及プロジェクト。実現すれば1年に300億kg増産でき、7000万人を養うことができる、とも。平行して水稲の遺伝子構造の研究も進められ、同年2/18付け人民日報は、中国科学院北京遺伝子構造研究所が既に水稲の遺伝子構造の全体像を解明した、と報じました。この年は新品種開発の成果も続々報じられ、なかでもスーパー交配種“Ⅱ優28”は1ムー当たり1229.97kgの世界記録を達成した、と報じられました。新品種の中では同800kgを突破したという宇宙で育種された“Ⅱ優航148”も注目されました。中国では宇宙育種が盛ん。1996年から開始され、2005年までに試験品種は2000種を超え、既に20あまりの新品種が生み出され、実用化の道を歩んでいます。2006年9月9日には、遂に初めての育種専用衛星“実践8号”が打ち上げられ、15日間宇宙を飛び無事回収されました。
最近中国で作物の遺伝子研究が盛んに行われているのには理由があります。中国は現在38万の作物種資源を持っていて長期にわたる保存資源としては世界一、これをベースに1999年には<国際植物新品種保護条約>に加盟し、植物新品種権の獲得に力を入れていますが、「中国の農民が栽培育成した作物の品種でも、外国人に遺伝子が複製されれば、特許権はその者の手に渡り、更に特許使用料を支払う羽目になる」というわけで、「新しい機能を持った遺伝子を発掘して作物種の資源における優位性を遺伝子資源の優位性に変えよう!」と専門家は呼びかけています。