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第269回 カラーテレビの動向
(2007年3月12日)
2006年8月21日の人民日報が中国の国産カラーテレビの抱える問題を特集しました。
「わが国のカラーテレビ産業は2005年時点で年間9000万台のカラーテレビ、1億のカラーブラウン管生産能力を備え、生産量・販売量とも世界一である。しかし北京の家電量販店では、康佳・長虹・海爾といった中国企業の42インチ液晶テレビが1万元前後なのに、同種の海外ブランドモノは2万元を超えている。国産品は販売量は多いが利益が少なく、1台の海外ブランド品の利益が国産品数十台分に匹敵し、販売量ベストセブンを独占する中国企業の全利潤が下位のソニー1社の利潤に達しない。“世界的な中国ブランド”企業選定委員会がカラーテレビ大手企業を対象からはずした理由は“自前の中核技術がない”」
2007年のカラーテレビ市場はまさに決戦の年。液晶型とプラズマ型と従来のブラウン管型の角逐が続きますが、ブラウン管型が中国市場でいつまで余命を保つか、5年と主張する向きもあればあと1年という見方もあります。いずれにせよ、外資はきっぱりブラウン管型に見切りをつけ、薄型へ集中する方針を次々と打ち出し、日本企業では、東芝とソニーが2007年度に液晶型50万台前後を、松下はプラズマ型30万台の販売を目指しています。液晶とプラズマのせめぎ合いは、大型化を克服し価格面の引き下げに成功した液晶技術がプラズマを引き離しにかかっています。2006年上半期の数字では、プラズマテレビの47%増に対し、液晶テレビの伸び率は実に239%を記録しています。
こういった環境の中で中国企業の劣勢は歴然。理由は明白で、いつも目先の利益にとらわれ地道な研究投資を怠ったからです。その結果、依然として川上と川下にはさまれた低利の組み立て産業から抜け出せないのです。
2006年、人民日報で最もよく見かけた言葉は“創新”(イノベーション)。同年春に策定された『国家中長期科学技術発展計画綱要』では2020年まで毎年9000億元の資金を投入するとしていますが、次世代DVDでのEVDの推進や携帯電話の通信技術に見られるような、国を後ろ盾にした強引な拙速が却って企業の足腰の強化を阻害している事実も直視すべきです。まず技術開発重視を中小企業レベルまで浸透させ、その努力と成果を守る知財権擁護の気風を醸成しない限り、中国企業のアキレス腱はこれからも続くことでしょう。