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第273回 WTO加盟5周年の総括−その2−
(2007年4月9日)
胡鞍鋼清華大学中国国情研究センター主任は、中国のWTO加盟の収益を国内収益(貿易収益・産業収益・発展収益・改革収益)と国際収益(周辺経済体・非先進国・世界経済への貢献)に分類して肯定した後、一方で外部との様々な軋轢も生じており、ウインウインの関係を構築するために「①主体的参加の原則②積極協力の原則③“give”(援助・交流)してから“take ”する原則④自発的開放の原則が必要である」と説いた。
余永定中国社会科学院世界経済研究所長は、WTO加盟は「責任ある大国としての中国のイメージを築き、一部の国の中国に対する貿易上の一方的制限を抑制すると同時に、中国の社会主義市場経済建設を深化させ、法律の整備や透明度の向上に役立っている」「外国との貿易摩擦の解決に法律的枠組みを与え、国内市場の競争を促進して国有企業などの独占を打破した」と評価する一方、地方の無分別な外資導入政策を批判し、「WTOに違反しない範囲で必要な政策を実行し、外資に対して一定の規制を行う必要」も説いている。
温鉄軍中国人民大学農業農村発展学院院長は農業の立場から、「中国の農業は5年経った今も依然として従来型の小農型生産方式が主で、都市と農村の2元構造が歴然として存在している。農村にはまだ2300万人以上の貧困人口が存在し、1億以上の就業問題がある」として、中国が発展途上国であることを忘れてはならないと強調した。
郭寿康中国人民大学法学部教授は知財権の問題に触れ、5年間で<特許法><商標法><著作権法>などが整備され、それに伴って多くの自前の特許が取得されるようになったことを評価する一方、深刻な知財権侵害に対処する必要性を説いた。
注目されるのは海聞北京大学副学長で、まず、自ら自由貿易信奉者であると名乗った後、「中国は大国であり、その優位性を利用すべきだ」「多国籍企業といえども大国の一つの産業分野全体を独占することなどできない」「10〜20の多国籍企業がその分野の80%を占めても、外資という括りで独占と見てはならない。彼らの間にも熾烈な競争があるのだ」と述べ、「経済の安全を標榜して外資を利用するメリットを放棄してはならない」と警告した。
そして、多少のリスクはあっても順次開放を進めるべきであり、その一方で立ち遅れている対内開放、特に民営企業に対する開放を進める必要性を主張している。