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 第275回 物権法の制定−その1−

(2007年4月23日)

2007年3月16日に閉幕した10期全人代第5回会議で物権法が採択されました。中国では1986年に財産所有権に関する規定が盛り込まれた<民法通則>が全人代を通過した後、98年に全人代常務委員会法制工作委員会に民法典研究チームができ、物権法制定への実質的な模索が始まりました。2002年、<中華人民共和国民法>の草案がまとまりましたが、物権法はその重要な一部分を占め、更に2004年の憲法改正では合法的な私有財産の保護が明記されました。以後、2005年には草案の全文を公開して一般から11543件もの意見を採取しつつ、全人代常務委員会で更に7回の審議を繰り返し、漸く今回の全人代に上程され通算8回目の審議を行って採択されたのです。
この物権法制定の過程でまず問題になったのは、公有財産の保護と私有財産の保護のどちらを主に考えるか、ということでしたが、「国家の財産と集団の財産と私有財産は平等に保護される」という原則の下、国は公有制経済をゆるがせにせず発展させつつ、非公有制経済の発展を支持しリードするのであって、「前者は社会主義の基本経済制度を維持するために不可欠であり、後者は市場経済の原則を遵守するために不可欠である」との考えが示されました。全人代常務委員会の成思危副委員長は人民大衆の利益を小河に、国家の利益を大河に喩え、「小河有水大河才能満,小河没水大河也要干」と表現しています。
このことについて胡鞍鋼精華大学国情研究センター主任は記者に対し端的にこう述べています。「今回の全人代は中国の市場経済体制が最終段階に入っていることを示している。中心となる物権法案の背景には、法治国家として土地(の使用権)、住宅など広範な私有財産が保護されなければならない、との認識がある」「これまでは財産権が侵害された場合の対処方法を明記した法律がなかった」「土地(の使用権)の収用には補償が義務付けられ、法治が進むことになる」(2007.3.4読売新聞)
今回の最終審議では、農地の汚染に対し原状回復の要求を可能にしたことや、集団の名義で出された決定でもそれが集団のメンバーの合法的な権利を侵害している場合は裁判所にその取り消しを請求できるようにして地方の権力者の勝手な行動に網をかぶせるなど、さらに60箇所余りの修正が加えられましたが、同法の主な内容の紹介は次回に。

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