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第278回 職業教育−その2−
(2007年5月21日)
第5回国勢調査によれば、農民出身労働者の学歴は平均8.88年でほぼ中卒なみ。しかし、先進地域の企業の要求は高卒がほとんどで、広東省80企業での充足率は16%に過ぎず、“技工荒”(技術者不足)が顕在化しています。加えて近年、大学入学枠が急拡大し、1998年の1000大学が2006年末には2300大学になり、在校生は4倍強に膨れ上がり、中等職業教育在校生数は1998年の1431万人が2001年には1164万人に急減しました。また、長年にわたる技術労働者評価基準の学歴偏重が不人気に拍車をかけ、職業・技術学校は劣等生の行くところという風潮が蔓延、余計進学者を減らしたのです。
大学生が増えた分、質の高い人材が確保できたかというと、教育内容が一定分野に集中したままだったため、社会のニーズとミスマッチを起こし、就職達成率は70%前後と空前の就職難に。例えば北京市では、2006年第2四半期、求人側は45%のポストが埋まらず、学生は25%が就職できない状態。大学では就職先が見つからない学生が新たな武器を身につけようと戻って来る“回炉”現象が起こっています。
この結果、企業の中心となる高級技術者は大半が40歳以上と老齢化が急速に進む一方、正規の訓練を受けた技術労働者は全体の3分の1に過ぎず、製造加工業はもとより、宇宙航空産業・自動車産業・IT産業・医療看護・その他様々なサービス産業が深刻な人材難に見舞われ、「世界の工場」の前途に黄信号が灯っています。蘇州工業区では毎年3万人以上の高級技術者が必要なのに市内職業技術学校年間卒業生数は僅か5000人程度。高級技術者は企業間で奪い合いとなり、長江デルタのある企業では年俸10万元でも確保できず、深圳市の高級技術者平均給与は修士出を1766元も上回る6234元に高騰しています。
2005年、国務院は『職業教育を強力に発展させる決定』を打ち出し、「2010年までに中等職業教育の募集規模を普通高校とほぼ同規模の800万人にする」ことを、20世紀末の『9年制義務教育の普及達成』、2005年の『大学入学率21%到達』に次ぐ第三の教育改革目標として位置づけ、第11次5カ年計画期間に職業教育の発展に140億元を投ずる計画を発表しました。しかし、こういったブームを背景に、設備や教師の質が低い杜撰な職業学校やインチキ職業資格も急速に蔓延しつつあり、行政の迅速な対応が求められています。