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第280回 食の安全−その2−
(2007年6月11日)
中国における食の安全を脅かしているのが、農産物自体の汚染・食品を生産加工する時点での偽物粗悪品の製造・食品の流通過程での違法行為など。こうした問題への取り組みが漸く具体化の一歩を踏み出した年、2006年はそういう年だったと言えましょう。
その目玉とも言えるのが、同年4月に全人代常務委員会を通過し、11月1日から施工された『農産物品質安全法』です。同法は全8章、第2章:農産物品質安全基準 第3章:農産物生産地 第4章:農産物の生産 第5章:農産物の包装とラベルとなっていて、各項に対する県レベル以上の行政府の責任が詳しく規定され、一方、第7章:法律責任では、農産物品質安全検査機構がデータを捏造した場合に5万元以上10万元以下の罰金が科せられるなど、様々な違反項目に対し厳しい処罰規定が設けられました。
中国ではこれまで『食品衛生法』『製品品質法』は制定されていましたが、前者では植物栽培や養殖といった農業活動を扱うことができませんし、後者は加工・製造された製品にしか適用されず、これでは<畑から食卓までの管理>をするには不十分でした。GDP一点張りの成長路線を突っ走った中国では、環境破壊と環境汚染が著しく進み、大気・水・土壌など農地自体の汚染で、民衆の食の安全が根底から脅かされる事態になっています。例えば2月20日付の人民日報は、山東省済南市のあるスーパーで“無公害”の認定を受けたニラが1キロ8元、キュウリが同16元で売られている、と報じましたが、この値段では一般庶民の口には入らず、問題の解決につながらないことは明白です。
2006年末、広東省は全国に先駆け、『広東省食品安全条例(草案)』の審議に入りましたが、イギリスや日本では既に整備されている同法の制定が2007年春の全人代で視野に入ってきました。栽培・加工→包装→貯蔵→輸送→販売→消費という全過程を網羅する同法が制定されれば、食の安全に対する大きなインパクトになるでしょう。
国家食品薬品監督局は2010年までに全国の90%以上の県(市)を網羅する食品安全情報監視測定ネットワークを構築し重大な食品事故処理率100%を目指すとの考えを示しましたが、遺伝子組み換え作物に対する議論が漸く高まりを見せるなど、食の安全に対する国民の関心はこれまでにない盛り上がりを見せつつあります。