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 第281回 孝道

(2007年6月18日)

2007年3月11日の人民日報第10面で“孝道弘揚 共建和諧”『孝道を称揚して共に調和の取れた社会を築こう』という全面特集が組まれました。その中で、2005年に黒龍江省人民代表大会代表の一人が全国の農村の孝道の現状に対して行った調査の深刻な結果が紹介されています。それによると、10401名の60歳以上の老人の内、三食が不自由5%/一年間新しい服無し93%/薬に手が出ぬ67%/医者にかかれない86%/自分で野良仕事85%/自分で家事97%、という有様。結論として、「農村で最も粗末な食事をし、ぼろを着、あばら家に住み、働きながら孫の面倒を見ているのが老人だ」とのこと。
同記事は、更に老人への冷淡・遺棄・虐待・干渉・老人の財産の奪い合いなどの実例を生々しく紹介し、その原因として、①社会の変化と科学技術の進歩により老人の経験が尊重されず、権威を失った ②文革による倫理観の崩壊 ③核家族化による別居の影響 ④学校での道徳教育の欠如 等を挙げています。
こういった現状に対し、学校教育の中で様々な取り組みが始まっています。武漢では、生徒の自己評価や保護者・地域住民の評価も加えた“新三好学生”(良い公民・良い生徒・良い子供)の表彰を始めました。「良い子供」の評価項目には「目上の人を尊び親に孝行を尽くす」「進んで奉仕をする」の2項目が挙げられています。江西省の南康市では夏休みに、「一日一回親に挨拶を」「親にお茶を出そう」などの“孝心作業”(親孝行宿題)を出しました。広東省では「親への手紙」で感謝の気持ちを育む運動を始め、大連の小学校では「お母さんの足を洗う」ことを冬休みの宿題としました。ただこれには「臭くない?」など生徒の反応が至って悪く、「お駄賃が必要だろう」との保護者の声も紹介されています。
行政も参加を始めました。山西省の永済市では、親の面倒を見なかった党員が警告処分を受け、同省河津市では「親不孝者は幹部に選抜しない」との規程が設けられましたが、基準が不明確な親孝行を制度に適用することへの反対意見も出ています。
親孝行自体を否定するものはいないでしょうが、一人っ子が多くなった現在、孝心があっても双方二組の親の面倒を見るには困難が多く、社会保障制度が不備な現状でこの問題にどう取り組むかは、中国社会に突きつけられた難題と言えましょう。

三瀦先生のコラム