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第288回 中国語の海外普及
(2007年8月13日)
2007年3月に北京で開催された『世界漢語大会2007』のプレス発表によると、既に世界52の国や地域に140の孔子学院が設立され、2007年中にその数は200箇所に達する見込みで、漢語派遣教師数も2006年実績で80カ国、1004人にのぼった、ということです。
WTO加盟後の目覚しい経済成長を背景に、中国政府は国策として世界で中国語を普及させる活動を展開しています。その象徴が孔子学院で、WTO加盟の翌年、2002年には海外に中国語普及機関の設置を始め、2004年に正式に孔子学院と命名されました。中国側の発表によれば、2005年時点で全世界の中国語学習者の数はほぼ4000万で、2010年には1億人に達するとの見方もあります。孔子学院の展開はまさに時流に乗ったものであるとともに、時流を推進するエンジンとしての役目も期待されているのです。
日本でも孔子学院の整備が着々と進められ、2007年4月には、李肇星外相・王毅大使の出席の下、早稲田大学で日本で7校目となる孔子学院の設立式典が開催されました。イタリアでは2006年9月、ローマ大学に最初の孔子学院が設立されましたし、中国との連携を深めているアフリカ諸国にも既に6箇所設立されています。2005年設立のロンドン孔子学院では、2006年に世界最初の『ビジネス孔子学院』も開設されています。
これら世界各地の中国語教育をサポートする体制の整備も喫緊の課題となっています。2006年7月に開通した『中国漢語ネット』は、北京師範大学が政府の指導の下で立ち上げた中国語国際普及活動機関『漢語国際普及北京基地』の活動のひとつで、海外学習者に中国語の知識や中国文化を紹介することを目的としており、同年11月には海外向けの『漢語世界』(英漢2ヶ国語)が上述の『北京基地』と商務印書館から共同で発刊されました。このほか、中国語検定試験のHSKも2007年から従来の11級を初級・中級・高級の3段階(各級を合格と優秀の2種で評価)に簡素化し、会話や作文を課すなど大幅な改革が始まっていますが、何といっても最大の課題は教員の養成でしょう。仮に教員:学生の比率を1:20で計算すると、2010年の学習者が1億人として500万人の中国語教師が必要になります。しかし、現在、全世界の外国人向け中国語教師はわずか4万人あまり。対外漢語教師の養成と海外向け教材の整備も待ったなしの情勢になっています。