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 第289回 農村新合作医療

(2007年8月20日)

人口の80%を占める農民が享受する衛生資源は国全体の20%に過ぎず、平均寿命は大都市に比べ12年低く、児童の死亡率は大都市の9倍。そして、450万の肺結核患者や65万のエイズ患者(2005)はほとんどが農民。医療機関や医師の不足、医療費が負担できないなどの理由で、70%以上の農民が適切な医療を受けられない農村の厳しい現状を改善しようと、ここ数年、国を挙げて積極的な取り組みが始まりました。そのきっかけになったのが新型農村合作医療制度です。
2010年に全国の農民をほぼ網羅することを目標にしたこの制度は、行政がリードし、農民が自主参加し、個人や政府が資金を分担し合って維持する一種の医療共済制度で、具体的には、農民は年に10元支払えば参加でき、中央政府と地方政府で農民一人当たり20元を補助し、入院しても定められた割合に応じて医療費が免除されます。
2003年から257の県(市・区)で試験的に導入されたこの制度は、2006年から急速に発展し、同年末には、全国の50.7%(1451箇所)の県(市・区)に波及、参加農民は4.1億人(全国農業人口の47.2%)に達しました。同年8月末、衛生部など4部門は合同で『農村衛生システムの建設と発展プラン』を通達、その中で、第11次5カ年計画中に国は200億元余りを投じて、県レベルの医療衛生機構・郷鎮レベルの衛生院・村レベルの衛生室という三段階衛生ネットワークの整備を進め、2010年には、2.2万箇所の郷鎮衛生院、1300箇所の県病院などを改造または新設することを示唆しました。
医師の養成も急務。2006年1月に衛生部は初めて「全国優秀農村医」(“赤脚医生”「はだしの医者」)200人余りを表彰しました。全国82万の彼らこそ、漢方薬とともに広大な中国の農村医療を長年にわたり支えてきた縁の下の力持ちだったのです。彼らを支援し更にその医療技術を高めるべく、衛生部を中心に、2005年から『万名医師農村衛生支援プロジェクト』も開始されましたし、医学部卒業生の農村勤務奨励制度も始まっています。
ただ、こういった取り組みもまだ完全ではありません。5%の農民は参加費の10元さえ払えず、参加しても免除額を上回った分が払えない農民も多いのです。このため、彼らを救う更なる取り組みも中国赤十字会などを中心に始まっています。

三瀦先生のコラム