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第298回学術界のモラル
(2007年10月22日)
最近、中国で学術界の不正を弾劾する動きが盛んになっています。2006年末には、南開大学のある博士学位取得者が剽窃を理由に学位取り消し処分になりましたが、蔓延するこの種の行為に対し、山西省教育庁は、2007年以降、専門技術職称申請者の業績について逐一調査し、不正が認められた者は3年間申請資格を剥奪する、と発表しました。
一部の学術誌が様々な手口で便宜を図る業績作りの裏技も暴露されました(人民日報2007.1.23付、陝西省宝鶏市韓恩強氏)。それによると、1)本来隔月刊で1年6期のはずを7期にし、希望者の論文をこれに押し込む。2)表紙もそっくりの同じ号を2種類作り、金を払った人の論文を掲載した偽物はネット非公開。3)「総合版」「会議増刊号」「記念号」またはAB版・上下冊などの名目で発行、といった具合。
雲南省政治協商会議委員の指摘(2007.2.5付)では、2004〜2005年に国や省の特別貢献賞または政府の特別補助を獲得した者の7割、部門によっては8割が行政府の指導幹部だ、とのこと。原因は幹部の名前がないプロジェクトは認可の可能性が少ないからで、専門研究者が一生かかっても達成できないような多くのプロジェクトリーダーを兼ね、数年で技術者→高級技術者→教授級技術者→修士課程指導教官と昇りつめた者も。当然影では多くの研究者が支えているわけですが、彼らにも当然見返りが用意されているわけです。
こういった腐敗に対し、国の本格的な取り組みが漸く始まりました。2007年1月、科学技術部は<科研誠信建設弁公室>を発足させ、『国家科学技術計画における不正行為処理方法(試行)』の規定に基づき取締りを行う、と発表、不正通報電話010-58881725が設置されました。また、科学技術部・教育部・中国科学院など関係6部門による連合会議が結成されて全体を把握する一方、調査の専門性に鑑み、15名の専門家による委員会も設置が決まりました(7月に発足)。また、中国科学院は2月26日、『科学理念に関する宣言』『科学研究行為規範強化に関する中国科学院の意見』を発表、科学研究行為に関わる6つの基本的規範を明示し、3月23日には中国科学協会も『科学技術者科学モラル規範』を発布して7種類の行為を不正行為として具体的に提示しました。更に、各大学・研究機構配布用の意識改革用教材『科研誠信知識読本』の編集も連合会議によって進められています。