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第312回耕地と食糧の確保
(2008年2月4日)
ここ1年、中国の食糧政策は一つの大きな転換点にさしかかっています。2007年、中国は4年連続の食糧増産を達成、第11次5カ年計画の目標5億トンをクリアしましたが、政府からはむしろ切迫した危機感がひしひしと伝わってきます。なぜでしょうか。
2007年3月22日、人民日報に中国科学院李振声氏の『中国人能養活自己(中国は自分を養える)』という一文が掲載されました。その中で李氏は、1995年に中国の食糧問題に警鐘を鳴らしたレスター・ブラウンに対し一定の評価はしつつ、現実は「①人口増加速度は予測の3分の一だ。②一人当たりの耕地面積減少速度はさほど急激ではない。③穀物輸出入量は15年間ほぼ均衡しており、輸入量は総消費量の0.6%だ」と指摘し、「中国は自分を養える」と主張、しかし、結語では「1999から2002年まで食糧生産は5年連続下落した。ここ3年、農業税の廃止や補助金で農民の意欲が喚起され増産に転じたが、我々は決して食糧問題で油断してはならない」と述べています。
政府が危機感を感じている最大の要因は耕地の減少で、統計では、1998年(19.45億ムー)から2006年(18.27億ムー)まで年々減少しています。品種改良や科学的農法の普及で生産量は増大していますが、1996年に『中国の食糧問題』白書が掲げた自給率95%の目標を達成には、2010年に18.24億ムー(穀物需要量5.88億トン)、2030年には18.5億ムー(同7.04億トン)の確保が必要で、既にぎりぎりのラインと言えます。
2007年8月、国土資源部が『土地管理法』施行以来初の、地域でのバランスからプロジェクト別のバランスへと踏み込んだ、『土地の開発と補充のバランスに関する調査報告』を発表しました。数字上では、耕地の占用が149419ha、補充面積が149902haと拮抗していますが、補充耕地の質が問題で、交通の便や生態系の脆弱さ・造成後の管理の欠如などで放置される耕地が多いことも判明しました。補充面積そのものの確保も問題で、河南省など各地で始まったレンガ工場閉鎖はまだ端緒に着いたばかりです。耕地保全のため従来の『退耕還林還草』政策が見直されていますが、地方政府の錬金術の温床となった土地の安易な収用転売を防ぐ方策の強化も必要で、2008年1月1日から試行された『耕地占用税暫定条例』は、税率アップによる転用抑止効果を狙ったものと言えましょう。