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第326回知的財産権問題の現状−その2−
(2008年5月19日)
2006年7月1日、<情報ネットワーク伝播権保護条例>が施行されました。これまで野放しになっていた、インターネット上の様々な著作権を有するコンテンツに対する無断使用、無断転載を禁ずるもので、2007年6月9日には、2006年12月に全人代常務委員会で批准された<世界知的財産権機関(WIPO)著作権条約>と<世界知的財産権機関実演と録音製品条約>が正式に発効しました。これらは、中国がインターネットの知的財産権保護について真剣に取り組む姿勢を示したものと捉えられています。
中国ではネット上での著作権侵害が氾濫しています。2007年1月にCCTVが放映した歴史ドラマ『臥薪嘗胆』は、撮影中、細心の注意を払ったにもかかわらず、放送の数日前にはすでに一部のネット上で公開され、放映第一週の視聴率はわずか1.8%、同様の被害を蒙った<大宋提刑官2>と合わせ、6000万元を投資した製作会社は1000万元近い損害を蒙った、と言われています。実際、多くのドラマがネット上で自由に閲覧可能で、その被害は測り知れません。学術面でも状況は似たり寄ったりで、2007年4月17日の人民日報は、社会科学院研究員呉鋭氏が受けたネット上での著作権侵害を例に、近年の無法振りと研究者の困惑を克明に紹介しています。
2006年9月から2007年1月までの4ヶ月間、国家版権局は全国で<ネットによる著作権侵害取締り特別行動>を実施しました。その結果、436件を摘発し、71台のサーバーを没収、205の違法なネットを閉鎖させた、とのことですが、これが氷山の一角に過ぎない事は自明の理で、その後、2007年8月には<2007年ネットによる著作権侵害取締り特別行動に関する通知>が出され、全国的に第3次取締りが展開され、2ヶ月で2005、2006年2年間の1.6倍の事案を摘発した、とのことです。
2006年末、新京新聞社がTOMネットを違法転載のかどで訴えた事件、2008年4月に北京市第一中級法院で審理が行われた中新ネットが慧聡ネットを訴えた事件など、訴訟も頻繁に起こっています。この4月15日には上海で8軒のインターネットカフェが、香港のテレビドラマを無断で提供した罪で6.5万元の賠償を命じられましたが、こういった問題は、中国と諸外国の間でも大きな問題になっています。