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 第336回中国、心のケア−その2−

(2008年7月28日)

学生や生徒の問題も顕在化しています。2006年に北京の20大学7000名の学生に対して行われた調査では、全体の12%に中程度以上の心の悩みがあり、退学者の半分は心理的ストレスが原因。同年末の統計でも、全国の大学生の16%〜5.4%に心理的障害あり、しかも上昇傾向をたどっているとのこと。では、学生たちのストレスの原因は何でしょうか。
2006年に中国社会調査所が全国主要都市200名に対して行ったサンプリング調査では、就職を挙げた者75%、自分の自分への期待41.7%、家庭環境や人間関係16.7%、恋愛8.3%となっています。そこで広東省教育庁では同年、「同省の心理健康教育専任教師の数は1:4000を基準として100名不足」だとして、各大学に3〜5年以内に適正な配置を行うよう指示しましたが、2007年現在、北京師範大は専任6名・非常勤7名、北京大も専任4名・非常勤9名、中国伝媒大学は1万名の学生に専任2名・非常勤5名のみ。しかもカウンセラー室は通常、学生部・共産党委員会・共産主義青年団の下部組織で専門性が低く、独立機構は北京師範大など全国で5箇所にも達しません。カウンセラー室も一部屋が主で、多くが若者。待遇が悪く、経費が少なく、就職しても職位の上昇が望めません。
低年齢の生徒でも問題は同じ。北京師範大学の調査では、心理的に中程度以上の問題ありとされるのは全国で小学生4.2%、中学生2.9%、高校生は2.5%。2007年の北京大学青少年衛生研究所の<中高生自殺現象調査分析報告>では5人に一人が自殺を考えたことがある、との結果が出ています。これに対し蘇州市は2006年に国内最初の<未成年者健康成長指導センター>を開設して100名余りの国家2級職業心理カウンセラー資格取得者を配置、石家荘市は市・県・学校や地域社会の三段階心理ケアネットを構築して800名のカウンセラーを養成して18歳以下の青少年に無料で相談に応じています。
先進国では百万人に対し500名のカウンセラーが、一般の発展途上国でも100名ですが、中国はたったの3名です。一方で中国では精神的疾患の発病率が各疾患発病率の首位になっており、精神科医が2万名不足しているとも言われ、県単位での精神衛生サービス機関の設置率も27%と低く、3000万人の鬱病患者のうち治療を受けている者は10%前後に過ぎません。真の小康社会を築く上で、「心の病」への対処がますます急がれます。

三瀦先生のコラム