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第三十四回 中国ロ−ン事情
-その1:住宅ロ−ン-
WTO加盟に伴う諸改革がもたらす失業者の再就職を確保し、社会の安定を維持するためにも7〜8%の成長率が至上命令である中国。ここ数年、政府はかげりの見えた輸出だけに頼らず、内需拡大にも力を入れることにし、様々な手を打ってきました。
そこで今、急速に整備が進み、普及し始めているのが様々な“貸款”(ロ−ン)。住宅ロ−ン、学費ロ−ン、自動車ロ−ン、農民向け小口ロ−ン、中小企業者向けロ−ン、消費者ロ−ンとロ−ンが花盛りです。今回は、これらの各種ロ−ンの状況と問題点を3回に分けてレポートしましょう。まずは住宅ロ−ンから。
今年の4月10日、中国工商銀行は同行の個人向け住宅ロ−ンの貸付残高が2000億元の大台を突破した、と発表しました。昨年1月に、2000年末で1000億元を突破、と報じられていましたから、わずか1年数ヶ月で倍増したことになります。
住宅ロ−ンの急成長は、同行の各種ロ−ンと比較しても顕著で、全ロ−ンに占める割合は、ここ4年で、0.2%から7.8%に上昇、その一方で、こげつきはわずか0.25%、利息回収率は98.7%に上るとのこと。同行では、第10次5ヵ年計画中に、更に住宅開発に3000億元、個人住宅ロ−ンに7000億元(500万戸分)を投入する、と表明しています。
昨年行われた調査によると、住宅購入者の47%がロ−ンを利用していますが、問題はロ−ンへの依存率が70%を超える事例がその65%にも達すること。そこで、今後懸念されるのが焦げ付きの大量発生です。事実、一昨年から、その発生率はじりじりと上昇しており、その原因としては、返済能力証明書の水増しや、銀行間の情報交換の不備を衝いた所得証明の重複使用などが挙げられています。
昨年6月、中国人民銀行は<住宅金融業務規範化に関する通知>を公布、頭金なしの住宅ロ−ンを禁止し、担保についてもその割合が80%を超えてはならないなどの制限を設けました。一方で四川省成都市には住宅ロ−ン申し込み手続きを一括処理するセンタ−が、また、上海には、ネット上で申し込み手続き可能な"房産之窓" (www.ehomeday.com)が出現するなど、利用者向けのサービスも次々と登場しています。借り易さとチェック機能の向上という両面をどうカジ取りするか、行政の手腕が問われていると言えましょう。