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第343回転換期の珠江デルタ経済圏−当面の諸問題
(2008年9月16日)
広東省は2006年に外国貿易額が5000億元の大台を突破し、とくにハイテク関係の輸出額(全輸出額の34.5%)と民営企業の輸出額(前年比58%増)は全国トップの座を占め、外資系企業の進出も相次ぎました。しかし、2007年後半になると、広東省を中心とした珠江デルタ経済圏が曲がり角に差し掛かった、という見方が急速に広まり始めました。その主要なきっかけとなったのが加工貿易政策の変化です。
政府は2006年11月に輸出還付金を廃止するなど804種の商品に関わる<加工貿易禁止類目録>を公布したのに続き、2007年4月には<2007年版加工貿易禁止類目録>を、同6月には2831品目に上る<一部商品の輸出還付率引き下げに関する通知>を出しました。更に7月になると、繊維・プラスチック・家具類など労働集約型産業に関する1853品目を対象とした<加工貿易制限類商品目録>も公布しました。こうした動きに最近の輸出構造の転換(高付加価値・低エネルギー消費・低汚染へ)、輸出主導型から内需消費拡大型への転換、産業構造の転換や元高対策などが深く関わっていることは言うまでもありません。
この政策転換は薄利多売を基調とした労働集約型産業を直撃しました。原料などの輸入税の納入や保証金の用意など資金繰りにプレッシャーがかかります。広東省の加工貿易は全国の4割以上を占めており、東莞では3000社以上が深刻な影響を蒙り、珠江デルタ経済圏に投資している6万社近い香港系企業も半数がこの影響に晒されました。この政策は2008年8月23日まで1年間の過渡期が設けられましたが、その間に各企業は他地域へ移転するか、または生産スタイルを変えるかの選択を迫られました。
珠江デルタ経済圏では人件費の上昇も顕著で、ここ3年は毎年100元以上上昇しています。2007年第4四半期、同地区の労働力需要は前年比71%増なのに対し、求職者は32%増に過ぎず、明らかに売り手市場になっています。2008年2月、広東では企業の最低賃金が5種類全てで10%以上アップし、全国最高になり、今後3年間、毎年引き上げることも確認されました。また、2008年から施行された労働契約法は、広東省だけで600万人を雇用している台湾企業の進退に大きく影響しています。<労働契約法実施条例>の整備も含め、早急な対応が求められますが、珠江デルタ経済圏の今後の展望については又次回に。