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第344回珠江デルタ経済圏−今後の展望
(2008年9月22日)
2008年6月に広東省統計局が発表した数字では、前5ヶ月の赤字工業企業は11006社(12.7%増、省全体の26%)、赤字額も49.3%増大し、いかにして経済発展モデルの更なる転換を図るかは喫緊の問題です。張徳江省前書記は在任時、同省の9大工業分野を分析、専門家の提案を受け入れ、紡績・建築・食品は技術の向上を、電子情報・電器機械・自動車・石油化学には積極的なサポートを、新素材・バイオ医学には広い発展のスペースを、という政策を展開し成果を収め、2008年に国務院副総理に栄転しました。その広東省が今直面している問題の解決はまさに中国経済のステップアップの試金石。GDP全国第三位の省都広州市は既に第3次産業が50%を超え、第2次産業もハイテク化の道を歩んでいますが、その行方が大いに注目されるところです。
広東省を含めた珠江デルタ経済圏の今後の発展展望の中で、主要な要素の一つが重層的な地域発展の視点。広州と深圳の常住人口は2005年既に1平方キロメートル当たり1277人/4239人と飽和状態で、地域的な連携による問題解決が不可欠となっています。一方、2007年5月に17項目にわたる“深香創新圏”協力協定が調印された如く、両市に香港を加えた南北160キロ・東西50キロの珠江デルタ中心域は一つの産業回廊を形成するとともに、人口・土地・様々なインフラを含めた総合的発展プランを求められつつあり、更にマカオも加えた「大珠江デルタ」生活圏構想も連動しています。
こういった動きとともに、広東省全体としての再配置も始まっています。同省は2005年に<わが省山間地区・東西両翼と珠江デルタが共に産業移転を推進することに関する意見>を、2006年には<広東省東部地区の経済社会発展加速推進に関する意見>を出し、珠江デルタ地域の労働集約型産業を賃金コストの低い周辺地区へ移転させ、省全体としての発展を目指す政策を進めています。労働集約型産業移転の動きはまた、省の枠も越え、隣接する広西チワン族自治区に香港・台湾系企業を中心に移転が進んでいます。
もっと視野を広げると、2007年は長江以南をほぼ網羅する汎珠江デルタ経済圏の協力と発展が積極的に進められ、6月の同フォーラム兼商談会では1254項目が調印に漕ぎつけています。ASEANや台湾も包含しようという広域経済圏の形成は既に始まっているのです。