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第350回最近の水問題と対策
(2008年11月4日)
2008年1月に開催された全国水利庁局長会議は、中国政府が2008年に中央・地方併せて136億元あまりを投入し、3205万人の飲料水の安全問題を解決する、と発表しました。中国の農村では、まだ2億人あまりが安心して飲める飲料水を確保できておらず、<全国農村飲料水安全プロジェクト“十一五”プラン>では、第11次5カ年計画期間中に国が655億元を投入して1億6千万人の飲み水を改善することになっています。
中国は今、水に関して待ったなしの問題をいくつも抱えています。これらについて陳雷水利部長は重点課題として、①洪水対策 ②危険ダムの修理 ③農村の安全な飲料水の確保 ④農業用水の確保 ⑤河川の治水対策 ⑥水資源の節約と水源の保護 ⑦水と土壌の保全 ⑧農村水力発電の推進 の8項目を列挙しました(2008.3.22付人民日報)。
洪水対策で特に力を入れてきたのが淮河の治水で、2008年2月の時点で19のプロジェクトのうち13が完成し、長江や黄河などの大河に対する対策も進められてきました。しかし2008年も洪水被害は甚大で、一層の対策が急務です。②については、2007年1785箇所、2008年には422箇所の危険ダムに対処し、3年で全てのダムの安全を確保する計画が進められています。④について、1万ムー以上の灌漑地区を243箇所も抱える穀物生産地河南省では、13億元を投入して年間10億立方メートルの水を節約し、20億kgあまりの穀物増産に成功した、とのこと。年初の大雪で大被害を受けた湖北省では、数年来の「所有権を明確に、建設権を開放し、経営権を活性化させ、収益権を保障する」という灌漑管理体制改革で設立された1383の農民用水戸協会が機能し、急速に復興が進められています。
⑥に関しては、地域間における水の融通が大きな課題です。その最たるものが進行中の南水北調プロジェクトですが、山東省の黄河から河北省の白洋淀へ水を引く“引黄済淀”は、オリンピックの水の確保を視野に、2007年に続いて2008年も実施されました。
遼寧省は2008年の1月〜8月で年間30億立方メートルの水を人工降雨で獲得しました。新疆ウイグル自治区は、毎年1兆トンの水を運ぶと言う、上空北緯30度〜50度の空中水蒸気輸送ベルト(通称“天河”)から水を調達すべく、総額23億元を投じた4年計画の人口増水重点プロジェクトをスタートさせました。水源確保の戦いは空にまで及んでいるのです。