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第359回世界同時不況対策−その2−
(2009年1月13日)
10月17日の国務院常務会議で温家宝首相は当面の経済情勢を分析し、経済成長速度のダウン、企業の利潤と財政収入の加速度的下降、資本市場が不安定で低迷していることを挙げ、リーマン以後に対処する第4四半期のまとまった経済対策として、①農村穀物の買い上げ価格の引き上げや各種補助金の支給 ②担保システムや中小企業向けローンの整備など中小企業の発展の促進 ③労働集約型産業の増値税還付率の引き上げによる輸出の奨励と必需品の輸入の促進による貿易の安定的成長 ④災害復旧・各種インフラ建設・民生に関わる投資の拡大 ⑤物価上昇の抑制 などを柱とした10項目を掲げました。
同月20日、2003年以来、5年間連続して10%以上を維持してきたGDP増加率が、2008年の第1〜3四半期では9.9%に下がったことが公表されました。しかも第1四半期10.6%、2四半期10.1%、3四半期9.0%ですからその減速傾向は歴然としています。国家統計局のスポークスマンは発表時に「十分不尋常、十分不平凡、十分不容易」と述べたそうです(人民日報2008.10.21)。この間、消費者物価の上昇幅は5月から連続5ヶ月下落して、9月には4.6%になり、「産業構造の調整が進み、エネルギー高消費型産業の生産は増加率が前年同期比で6.4%下降したのに対し、ハイテク関連の製造業は16.5%増となった」とはいえ、対外貿易の経済成長に対する貢献率は8.9%も縮小し、輸出の不振が顕著で、内需拡大が焦眉の急であることは論を待ちません。そのために投資と消費をどう促進したらよいかが当面最大の関心事になりました。
従来、投資、特に公共投資の比重が高かった中国は、消費の促進によるバランスの取れた成長スタイルの確立を図ってきましたが、不況で下降した一般企業の建設投資意欲を掻き立てるための規制緩和・資金援助を行うと同時に、大幅な公共投資の拡大にも踏み切らざるをえず、交通・エネルギー関係のインフラ、病院・学校・託児所・老人ホームなど民生に関わるインフラの整備が浮上し始めました。2007年に、GDPに対する貢献率が始めて投資を上回った消費は、2008年も順調な伸びを示したものの、社会保障の未整備などが原因でまだ20兆元が貯金にまわっており、消費率は先進国と大きな開きがあります。これを消費に向けるには社会保障の充実が必要です。ただそれには時間がかかり、短期的効果は望めません。