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第361回タクシー問題の意味するもの
(2009年1月26日)
2008年8月1日、懸案の独占禁止法が漸く実施されましたが、2008年11月から中国全土で発生した10数件ものタクシー運転手による抗議行動は、中国における独占の弊害を象徴的に示したものと言えましょう。
11月3日、重慶市8000台のタクシー運転手がストを決行、行政側に、利益配分の不公平、価格体系の不合理、燃料補給の困難、白タク蔓延取り締まり欠如を訴えました。これに対し行政側は5項目の改善策を提示、事態は5日に漸く収拾されました。翌6日には同市委員会の薄熙来書記が運転手側代表と、タクシー会社側の過大な取り分、燃料補給の困難、高額の罰金などについて話し合い、その後、市関係部門責任者の処罰も発表されました。このニュースは全国のタクシー運転手に勇気を与え、海南省の三亜では200台が、広東省汕頭市では1000台が参加、広州市でも23日に大規模なストライキが発生、市は慌てて<広州市タクシー管理条例>草案の審議を始めました。こういった抗議行動の過程では現代の利器、携帯電話が大活躍、政府の強権的な抑圧を困難にしました。
現在、中国全土で営業許可証取得タクシーは100万台、運転手数も200万人を突破していますが、不満の最大要因は会社側の独占による弊害です。2008年初頭に国務院はタクシー業界の問題点として、①参入規則の不合理②経営権の管理の乱れ③白タク取り締まりの欠如 ④会社側の不当雇用の弊害⑤業界の体制の不備 の5点を挙げましたが、その後、一向に改善の兆しがありませんでした。タクシー経営権の譲渡は、もともと無償か低価格だったのですが、手に入れた会社側は高値で転売しぼろもうけをしていました。運転手は1ヶ月に1万7千元くらい稼いでも、会社側に各種の名目で7割以上徴収され、月収は2000元前後にしかなりません。しかも8時間労働は無視、社会保険もかけない、というのが現状です。
河南省新郷市では、1999年に初めて企業に対しタクシー経営権公開競売を行い、個人への経営権譲渡も認めましたが、白タクが公然と横行し個人の買い手がつかず、その後、白タク取締りを強化し、経営権も直接個人に譲渡、運転手は会社に所属して年500元支払い、事務的財務的処理を依頼する方式を推進して成果を挙げ、コストの軽減でタクシー料金も初乗り3キロ5元、追加は1キロ毎に1元と値下がりしたそうです(人民日報2008.11.20付)