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 第366回08年人民日報日本関係記事の動向−その2−

(2009年3月2日)

2008年における日中間の突出した問題の一つに食品問題が挙げられます。毒入りギョーザ事件、メラミン混入事件の衝撃はいまだに大きく尾を引いています。毒入りギョーザ事件では、中国側は当初、中国側に原因がないことを力説しましたが、始末すべき在庫分が再利用されるのではないか、という大方の懸念が的中、結果として再度中毒事件が中国国内で発生し、信頼の低下に追い討ちをかけることになってしまいました。
この毒入りギョーザ事件に関する人民日報の報道は2月に5本前後あっただけで、其の趣旨は概ね中国側起因説に対する否定的見解に終始しました。「製造会社は日本側の100%出資であり、責任は日本側の不完全なチェック体制にある」との記事も掲載されました。3月以降はこの件に関する記事がふっつりと途絶え、4、5月に在庫品を20あまりの企業に提供した結果、中毒患者が発生、日本ではこれが大きく報道されましたが、中国では事件はうやむやのうちに終わり、人民日報でも全く報道されませんでした。
こうした結果、中国の街中で尋ねてみても、国民の大多数は、毒入りギョーザ事件の責任はいまだに日本側にあると思っており、両国民の間に不必要な誤解を生んでいます。こういった点ははなはだ遺憾であると言わざるを得ません。
其の一方で、過去の戦争の歴史に関わる記事は年間でわずか8本ほどと大きく減少しています。“南京大虐殺”関連が3本、個別のエピソードが2本ですが、いずれも現代とは切り離した淡々とした記事で、唯一、田母神俊雄航空幕僚長の「日本は侵略国家ではない」と主張した論文問題についての反論記事が2編ありましたが、共に冷静で抑制の効いた内容に終始しました。
そのほか、両国間の問題としては、東シナ海ガス田協議の合意に関する記事が10本近くありましたが、「平和・協力・友好の海に」というベースを前面に打ち出しています。ただ、両国政府とも国内向けには最大限自国に有利な見解を提示しており、其の隔たりを将来どう埋めるのかは予断を許しません。
2006年ごろから、「日本に学ぶ」、「日本を参考にする」、「日本の失敗を他山の石とする」、といった記事が明らかに増えています。次回はそれらをご紹介します。

三瀦先生のコラム