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 第376回農民工の就職問題−その1−

(2009年5月18日)

2009年の春節前、中国政府は尋常ならざる緊張感に包まれていました。産業構造の再編、自然災害や金融危機の影響で、農民出稼ぎ労働者(農民工)の動向が予断を許さないからです。当時既に安徽省など主要労務輸出行政区では1000万以上の農民が帰郷、そこで政府は2008年末に<当面の農民工対策を着実に実行することに関する通知>を発しました。その主な内容は、①大都市と沿海先進地域は極力農民工の雇用を確保すること ②一時的に職のない農民工には各行政府が職業訓練を施し、能力アップを図ること ③政府の公共工事には可能な限り農民工を採用すること ④農民工の故郷での起業を援助すること ⑤農民工の土地の権利を保障すること などとなっています。更に2009年の目標として、都市部の新規就業者900万人、失業再就職者500万人、就職難解消者100万人、都市部失業登録者4.6%以内という数字を掲げました。
各企業にリストラを極力減らすよう求めるために、経営難の企業に対しては<五緩四減三補両協商>政策(5種類の社会保険費納入に関する猶予/養老保険を除く4社会保険率の段階的引き下げ/失業保険基金を社会保険と職務手当てに、就業特別資金を職業訓練補助に当てる/やむを得ないリストラで保証金を支払えないとき、労働組合及び従業員との対等な協議の上で、分割などの方法で支払うことを認める)が実施されることになりました。また、大規模な公共工事の実施とともに、私企業特に労働集約型の中小企業とサービス業の振興により労働力の吸収を図る方針も掲げられました。
中国の農民工の数は2億2000万人、そのうち出稼ぎ労働者は1億3000万人に達し、今回の経済危機で職をなくし帰郷した者は2000万人(出稼ぎ者の15.3%)に達したとことが明らかになりました(2009年2月2日、政府発表)。彼らは農民の収入増を支える重要なパワーであり、内需拡大政策の推進には不可欠です。しかし、今回の経済危機で職を失った多くの農民工に如何にして仕事をあてがうか、其処には幾つかの問題があります。一番の問題は労働力の質の問題で、技術を持たない単純労働力では、今後の経済構造の再編にも適合できません。各地の斡旋会場でも、単純労働には人が群がり、技術・技能を要するブースは閑古鳥、という状況が珍しくありません。さてどうするか。様々な議論と模索は次回に。

三瀦先生のコラム