企業向け中国語研修をリードするGLOVA China

ビジネスコラム|現代中国放大鏡

トップ > 現代中国放大鏡

LastUpdate:

 第377回農民工の就職問題−その2−

(2009年5月25日)

現時点での農村労働力の平均教育年限は6.8年。中央政府と各地方政府はこれを9年に持っていくことを目標に労働者の職業訓練に全力を注ぎ、農業部主管の[陽光プロジェクト]などの講習も盛んに実施し始めましたが、一方では、職業訓練という美名の下に失業者を一時的に囲い込み、暴発を防ぐのが趣旨ではないか、と思わせるような実質を伴なわない見せ掛けの講習会やインチキ講習会も報告されており、非常時だけに本末転倒にならぬよう政府のしっかりした管理が求められています。
また、働き口が見つかったといっても、その中身も問題で、社会科学院が2398人を対象に行った<農村転出労働者の労働保護問題>と言う調査では、53.7%が劣悪な労働環境にあり、45.2%が8時間以上の労働を強いられているとの事で、この面での改善も急務です。
更に農民工の年代別の対処も求められています。60〜70年代生まれの世代は教育水準が低く、従順で何でも仕事さえあれば、という傾向が強いのですが、一人っ子が多い80年代以降の世代は教育程度も向上していて自己主張もあり、不当な労働環境に甘んじようとはしません。既に農民工の主力は彼らに移っており、対処を誤れば社会の安定に関わります。
故郷での起業の援助も重要な項目です。ある程度の資金を持ち、技術や能力を身につけた農民工を如何にして故郷に留め、起業を促すか、各地方政府にとっては頭の痛い問題で、社会保障制度の整備とともに、都市と農村の一体化の加速による住環境・物質環境の整備、土地請負制度の改革などが焦点になっています。
湖南省岳陽市や安徽省阜陽市では、春節で帰郷した農民工の90%以上が春節後故郷に留まる意思が無いとのこと。そこで、湖南省では2008年末から帰郷した農民工を無料で技術学校に通わせ、更に1500元の学費補助をし、四川省成都市では、10万人の農民工に一人500元の就職向け訓練券を支給した、とのニュースも伝わっています。
仕事を探すルートも問題の一つ。農民工の場合、ネット上で探せるのは10%前後。農民工とその家族も含めると5億人のうち90%がネット社会の利便性の埒外にあり、これをどう解消して、職探しに役立てるかも緊急の課題です。職を探す「民工潮」と、技術ある労働者が足りない「民工荒」が共存する現状は待ったなしの施策を迫っています。

三瀦先生のコラム