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第380回長江デルタ−上海の新たな挑戦
(2009年6月15日)
1990年に浦東開発区の建設が始まり、急速な発展を遂げてきた上海。陸家嘴金融貿易区・外高橋保税区・金橋輸出加工区などが次々と誕生し、1978年の改革開放スタート以来、GDPは年平均10.3%の成長を維持してきました。既に90年代から労働集約型産業中心の第2次産業の構造を調整、更に第3次産業を優先的に発展させ、自動車・IT・バイオなどの産業を育成、2008年には第1,2、3次産業の構成比が0.8:45.5:53.7にまで変化しました。
2008年、国務院常務会議は<長江デルタ地区の改革開放と経済社会発展に関する指導意見>を原則的に承認しました。全国に対しGDPが22.5%、財政収入が31.5%、外資導入の過去の累計額が35%あまりを占めるこの地域の発展が、今後の中国経済を牽引する上で欠かせないと判断したからです。長江デルタを従来の16都市と言う狭い概念から開放し、江蘇・浙江と上海の2省1市全体に拡大、江蘇北部・浙江南部地区を包含することで、上海の今後の発展に大きなスペースを与え、可能性を付与しよう、というものです。
2008年5月1日に杭州湾大橋が開通、寧波をぐっと上海に引き寄せましたが、その寧波は沖合いの舟山群島と一体化した港湾の建設を進め、一方上海は、沖合いに洋山港を建設、芦潮港から東海大橋で結んでいます。洋山→東海大橋→芦潮港→上海→杭州湾大橋→寧波→舟山のラインが大きな一つの港湾のような弧を描き、この地域の一体化した発展を促進する一方で、北部では江蘇省の南通市に連なる蘇通大橋の建設が始まり、発展に取り残されていた江蘇省沿海の地域が「北上海」として取り込まれ、脚光を浴びるでしょう。
2009年3月25日、国務院常務会議は、上海を国際的な金融センター・国際的な水運センターにする<意見>を採択しました。2008年時点で既に375社の外資及び外資との合弁による金融機関が上海に進出、17社の外資系銀行が総本部を設置しています。2008年12月、上海は大規模な代表団をアメリカ・カナダ・ヨーロッパなどに派遣、ウォール街などから優秀な金融関係の人材を大量に採用する挙に出ました。上海を世界の金融センターにするには新しい金融商品の開発が不可欠、今が人材獲得のチャンス、と捉えたのです。
2008年11月に着工した高さ632メートルの上海センタービルが完成する2014年、上海が名実ともに世界の金融センターになれるかどうか、その行方に関心が集まっています。