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 第382回文化財問題を巡って

(2009年6月29日)

円明園の十二支のブロンズ像のうちの2体の競売問題は2月以降もなお議論を呼んでいます。この背景には、列強に簒奪された文化財を取り戻したいという愛国意識の高まり、人権問題に絡めた返還論議に対する反発など幾つかの要素がありますが、最大のポイントはなんと言っても、経済成長が一定の段階に達して文化の保存意識が高まり、経済成長の影で急速に破壊され失われてきた様々な文化遺産の保存に目が向けられてきたことです。その範囲は当初の有形文化財保護から無形文化財や民俗文化財に及び、最近では、都市の景観や地方の風情関わる建造物の保存も声高に叫ばれるようになりました。
具体的に言うと、“非物質文化遺産”の保存に本格的に目が向けられたのは中共中央宣伝部による<我国文化立法10年計画>(2004〜2013年)からで、“非物質文化遺産”保護法の制定に向けた歩みが始まり、2008年には草案審議が始まりました。既に第1回“非物質文化遺産”全国調査が進められており、2010年には省別にまとめた成果が出版される予定です。また、2008年2月には、民間舞踊・伝統劇・曲芸など5分野551人が“非物質文化遺産”伝承者の第2陣として認定されています。同月はまた、文化遺産保護事業の中心的な役割を担うべく、中国文化遺産研究院が北京に開設され、その後も、貴重な文献書籍の認定(2392部)が行われたり、<由緒ある都市・鎮・村の保護条例>も同年7月1日に施行されています。2007年9月から始まった第3回全国文化財一斉調査、これは80年代に行われた第2回以来久々のものですが、政府の危機感の表れのひとつといってもよいでしょう。
2008年10月にクリスティーズが、イブ・サンローランとピエール・ベルジェが共同所有していたコレクションの競売を2009年2月に行う、と発表し、その中に円明園十二支像のネズミとウサギが含まれていることが判明して以来、中国政府は直ちに行動を起こし、<盗難あるいは不法に輸出された文化財に関わる問題についての通知>を出して国内機関の競売への参加を阻止し、民間も「円明園流失文物追跡弁護士団」を組織して法的側面から訴えるなどの活動も行われましたが、25日、競売は予定通り実施されました。この間、様々な議論がありましたが、話題になることで値段がつりあがって業者を利することへの警戒や、中国人自身による盛んな違法輸出に対する取締りも強く叫ばれています。

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